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260話 影と影

 アカネイア同盟国。

 首都。

 とある軍事施設。


「交代の時間だ」

「そうか、もうそんな時間か」


 色々な武器が収められている兵器庫を警備する兵士の姿があった。


 軍事施設の端に作られた兵器庫。

 それは地下に建造されていて、入り口は一つだけ。


 兵士達の警備だけではなくて。

 頑丈な施設を地下に作ることで、賊の侵入を完璧に防いでいた。


 ……今日この日までは。


「うん?」


 交代を終えて、宿舎に戻ろうとした兵士が、ふと、足を止める。

 そして、灯りのない闇に目を向ける。


「どうしたんだ?」

「いや……今、なにか音がしたような?」

「本当か?」


 気の所為、で済ますほど抜けていない。

 そのような腑抜けた訓練を受けていない。


 兵士達は腰に下げた剣に手を伸ばす。

 いつでも抜けるようにしつつ、慎重に前へ進む。


「……」


 一人が前に出て。

 もう一人が灯りで闇を照らす。


 浮かび上がる姿は……


「にゃん?」


 兵士達の緊張が一気に解けた。


「……なんだ、猫か」

「たまにあるんだよな、こういうこと」

「ネズミ一匹通さない警備、ってのが理想だけど……さすがに、それは難しいからな」

「ま、それを目指していくのが俺達の仕事でもある。油断せず、それぞれの持ち場に戻ろう」


 油断をしたらいけない。

 兵士はそう言うのだけど……


 猫を見て、なんでもないと思い込んで。

 その時点で油断をしていたことに気づいていない。


 そして、それは大きな隙となる。


「え?」


 影から影が飛び出してきた。

 それは、手に持つナイフを兵士の急所に的確に刺す。


 なにが起きたかわからないまま兵士は絶命した。


 そんな相方の死をすぐに理解することができず。

 なにが起きたかも理解できず、もう一人の兵士は呆けて……


「なっ……!? て……」


 ようやく我に帰り、「敵襲!」と叫ぼうとするのだけど……

 全てが遅い。


 もう一つの影が飛び出してきて、兵士に襲いかかる。

 叫ぶよりも先に刃が閃いて……




――――――――――




「ふんふ~ん♪」


 ブリジット王女の執務室。

 俺は、いつものように自分の机で自分の仕事をするのだけど……


「ねえねえ、お兄ちゃん。これ、どんな書類?」

「サンライズ王国との交易をまとめたものですね」

「ふむふむ……こっちは?」

「そちらは、ヘイムダル法国とのものです」

「ヘイムダル法国との方が、えっと……なんかこう、お得な感じだね」

「先の事件がありましたからね。それで、少しでも良い印象を残すために、赤字覚悟で色々と便宜を図ってくれているのでしょう」

「なるほど。それが『大人』の事情、っていうやつなんだね!」

「そうですね」


 シロ王女は、ぴたりと椅子をくっつけて、俺の隣から書類を覗き込んでいた。

 時折、甘える猫のような感じで体を寄せてくる。


 妙な感情を抱くことはないが……

 しかし、どう対応していいか迷う。


「……シロちゃん」


 妙に晴れやかな笑顔を浮かべているブリジット王女が、そう声をかけた。


「アルム君のお仕事の邪魔をしたらダメだよ」

「邪魔なんてしていないもん。それに、シロも、そろそろ公務のことを覚えていかないと。だから、色々とお兄ちゃんに質問しているの」

「そういうことなら、私に聞いて」

「お姉様は忙しいでしょう? だから、お兄ちゃんに聞いているの」

「ぐぬぬぬっ……」


 正論をぶつけられて、反論が思い浮かばないらしい。

 ブリジット王女はとても悔しそうだ。


 シロ王女が言うように、公務を覚えるためならば、この状況を許容してもいいのだろうけど……


 とはいえ、先の宣言もある。

 シロ王女に他の思惑があるような気がして、どう対応すればいいか迷うところだ。


「もぅ……」


 ブリジット王女は困った様子ではあるものの、なんだかんだシロ王女に甘い。

 仕方ないか、という感じで苦笑する。


「じゃあ、今回はシロちゃんの知識を借りようかな」

「ふぇ?」

「アルム君も。ここからは、ちょっと真面目な話をしようか」


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