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253話 アルムの心の在り方

 俺は、物心ついた時には執事として育てられていた。


 父親は、優秀な執事。

 母親は、優秀なメイド。

 そんな二人の間に生まれたのだから、執事になるのは運命といえたかもしれない。


 両親は厳しい人だ。

 でも、優しい人だ。


 日々の稽古は辛く苦しく、大変だ。

 でも、それらが終わった後は、必ず、両親は俺を甘やかしてくれた。

 たっぷりの愛情を注いでくれた。


 ……ただ。


 そんな両親は亡くなってしまった。

 二度と会うことができず。

 執事としての教えを得られることもなく。

 頭を撫でてもらえることもなくて。


 それらを理解した時は絶望して、心が壊れそうになった。


 その後、リシテアに拾われて、なんとか執事としてやっていくことができたのだけど……


 最後まで両親の教えを受けていないため、俺は、中途半端だった。

 執事としてはまだまだ未熟だと思っていた。


 だから、他の人よりも励まないといけない。

 主のことだけを考えて、全身全霊で挑まないといけない。

 自分のことは二の次だ。


 ……なんて。


 そんな考えが心の底まで染み付いているため、どうしても自分のことを蔑ろにしてしまう。

 いや。

 というよりは、よくわからない。


 自分のことだけど、自分のことなのに。

 それでもよくわからない。

 ずっと考えてこなかったから。


 ブリジット王女に対する気持ちがとても遅れてしまったのも、そういうことになる。


 ……言い訳だな、これは。


 だから今。

 ブリジット王女だけではなくて、シロ王女にも好意を寄せられて……

 よくわからない、という答えになってしまう。


 なぜ俺が?

 どうして?


 そんなことばかり考える日々だ。


 色々な意味で重症だ。

 ダメすぎる。

 とはいえ、すぐに効くような特効薬もなくて……

 日々を意識して過ごしていくしかない。




――――――――――




「……というわけでして、俺は、どうにも自分の感情を理解することが難しく」

「「うぅ……」」


 ブリジット王女とシロ王女、二人共、涙目だった。


「どうされたんですか?」

「アルム君、そんな風に思っていたなんて……」

「お兄ちゃん、かわいそう……」


 言い訳をするつもりはなくて、同情を誘うつもりもなかったのだけど……

 なにやら二人の涙腺を刺激してしまったみたいだ。


「ずっとダメ、というわけではありません。ブリジット王女の専属となり、そして、シロ王女やみなさんと出会い、色々と変わってきたと思います。ただ、情けない話ですが、まだ完全というわけにはいかず……」

「焦る必要はないよ」

「うん。お兄ちゃんは、お兄ちゃんらしくあればいいと思うな」


 俺らしく。

 それがどういうものなのか、未だ、自分自身でもよくわかっていないのだけど……

 うん。

 二人が信じてくれている俺を少しは信じられるように、がんばろうと思う。


 ただ。


 それとは別に。


「えっと……自分の勘違いなら、とても申しわけないのですが、シロ王女はもしかして……」

「うん、お兄ちゃんのことが好きだよ♪」


 とてもいい笑顔で言われてしまった。

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