252話 おや? 王女二人の様子が……
「おにいちゃーーーーーん!」
とある昼下がり。
シロ王女が全力ダッシュで抱きついてきた。
とはいえ子供の力。
押し倒されるなんてことはなくて、しっかりと受け止める。
「元気ですね」
「うん! お兄ちゃんに会えたから♪ ねえねえ、お兄ちゃんは、今日はなにをしているの? 確か、今日は休みだよね?」
「はい、その通りなのですが……未だに休日はどう過ごしていいものか、よくわからず。帝国にいた頃は、休日なんて幻と思っていましたからね。10連勤ではなくて、10年連勤でしたよ」
「えっと……お兄ちゃん。時折、ものすごい苦労話をさらっと話すの、やめてほしいな。シロ、ちょっと心が痛くなっちゃうよ」
しまった、引かれてしまったみたいだ。
ちょっとした冗談のつもりだったのだけど……
むぅ、さじ加減が難しいな。
「冗談です。10年ではなくて、本当は1年連勤です」
「えぇ……」
「それも、病気と怪我で体を動かせなくなるほどになっていたからで、そうでなかったらさらに記録が伸びていたかもしれませんね」
「えぇぇぇ……」
笑える冗談のつもりなのだけど、さらに引かれてしまう。
なぜだ……?
「と、とにかく、今日はお休みなんだよね?」
「はい、そうですね」
「なら、シロと一緒に……」
「アルム君」
ブリジット王女も姿を見せた。
「あ、シロちゃんも一緒なんだ。ちょうどいいね」
「どういう意味でしょうか?」
「これから、みんなでお出かけしない?」
――――――――――
三人で城下町へ繰り出して。
そして、ちょくちょくブリジット王女が通っているカフェに移動した。
そこでのんびりとティータイムとなるのだけど……
「ふふ」
「えへへー」
「えっと……」
ブリジット王女が右に。
そして、シロ王女が左に。
二人は俺を挟むようにして、それぞれぴたりとくっついていた。
「あの……これは?」
「これって、どのことかな? 私達は、ゆっくりお茶をしているだけだよね」
「ねー」
この姉妹、息がぴったりだ。
「ただのお茶ならば、ここまで密着しなくても……」
「私はアルム君の恋人だよ? プライベートなんだから、これくらいはいいと思うなー」
「それは……はい」
「わたしは、お姉様の妹。つまり、間接的にお兄ちゃんの恋人。だから、これくらいはいいと思うなー」
「いえ、それはおかしいのでは……?」
「むぅ、お兄ちゃんのいけず」
頬を膨らませても困る。
というか……
先日から、シロ王女のスキンシップが増した。
気がした、ではなくて、確実に増したと断言できる。
笑顔で駆け寄ってきて。
隙あれば抱きついてきて。
時折、にへら、と花が咲いたような笑みを向けてくる。
……なぜだ?
「私が言えたことじゃないけど、アルム君って、やっぱり鈍感だよね」
「ねー」
「!?」
なぜ、急にそのような話に……?
俺は、なにかしてしまったのだろうか。
しかし、己の行動を振り返るけれど理由に思い至らない。
「ねえ、アルム君。ちょっと真面目な話をするんだけど……」
「はい、なんでしょうか?」
「私とシロちゃんにこうされて、嬉しい? それとも、嫌?」
「それは……」
質問の意図が読めず、困惑してしまう。
ただ、妙なことは考えず、思ったまま素直に答えた方がいいような気がした。
「……正直なところ、よくわかりません」
「わからない?」
「俺は、少々変わった育ちをしているため……」
「「少々どころじゃないと思う」」
二人揃って否定されてしまう。
苦笑しつつ、先を進めていくことにした。
◆◇◆ お知らせ ◆◇◆
新連載です。
『悪魔と花嫁に祝福を~初心者狩りに遭った冒険者だけど、悪魔に一目惚れされて溺愛されることになりました~』
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