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24話 小さな戦争

 夜明け。

 ついに帝国軍が進軍を開始した。


 前衛に500。

 後衛に500。

 シンプルな陣で、真正面から叩き潰してやる、という敵の意思を感じる。


 実のところ、それで正解だ。

 圧倒的な戦力差があるため小細工なんて必要ない。

 この場合、相手に抵抗する間を与えず、一気に叩き潰すのが最善だ。


 ただ、それは通常の場合に限る。


 この村には俺達がいる。

 思い通りにいかないことを思い知らせてやろう。




――――――――――




「あー……めんどくせえな」


 それは前衛を務める帝国軍兵士のぼやきだった。


「なんで俺達帝国軍が、こんな辺境の村を落とさないといけないんだ? わざわざ俺達が出る必要はないよな。冒険者や傭兵に任せておけばいい」

「ま、そう言うな。今回の作戦は秘密裏に行われているからな、旨味はあるさ」

「っていうと?」

「そうだな……例えば、国際条約で禁止されていることをしてもバレることはない、とか」

「略奪をして金をもらってもいいわけか?」

「女を抱いてもいいさ」

「……悪くないな」

「……悪くないだろう?」


 二人の会話は他の兵士にも聞こえていた。

 しかし、彼らを咎める者は現れない。

 上官に報告する者もいない。


 つまり、そういうことだ。


「よっしゃ、やる気が出てきたぜ!」

「俺もな。最近はご無沙汰だったから、若い女を抱きたいな」

「お前の好みは若すぎるからなあ」

「いいだろ、好きなんだから。ああいうのを屈服させるのがたまらないのさ」


 などと、ゲスな会話をしていた時。


「魔物だ!? 魔物が現れたぞっ!!!


 悲鳴が響き渡る。


「魔物だって!? バカな、なんで村の近くで……」

「大変だ、王国軍も現れたぞ!」

「おい、こっちは罠だらけだ!?」


 悲鳴が悲鳴を呼ぶ。


 魔物に襲われて。

 王国軍の旗に囲まれて。

 その上で罠を浴びせられて。


 統率が取れなくなり、兵士達はパニックに陥った。


 命は落としていない。

 しかし、こんな状況では無効化されたに等しい。


 そして……


「今だ!」


 迷彩を被り近くに潜んでいたアルムの合図によって王国軍が現れ、一瞬でボロボロになった帝国軍にトドメを刺す。




――――――――――




「うまくいきましたな」

「ええ」


 王国の騎士と一緒に、目の前の成果に満足する。


 人間は戦術を組み立てるため、単独で立ち向かうことは難しい。

 しかし魔物に戦術なんて言葉はないため、単独で立ち向かい、なおかつ翻弄することが可能だ。


 なので、この1週間、俺は近くの魔物にケンカを売り回っていた。

 そうして魔物の動きを誘導して、この時このタイミングで、帝国軍と遭遇して激突するように調整してやった。


 それと、大量にある王国軍の旗はダミーだ。

 村人達に協力してもらい、合図で旗を上げてもらう。


 この1週間で急造したものなので、よく見れば偽物とバレてしまう。

 しかし、魔物に襲われてパニックになっている帝国軍にその判断をすることはできない。


 最後にトラップゾーンに追い込んで……

 敵の指揮系統を完全に崩壊させて、混乱の極みに落としたところで各個撃破だ。

 敵の被害は甚大で、しかし、こちらはの被害は極軽微。


「それにしても……恐ろしいですね」

「なにがですか?」

「500の帝国軍を、たった数十で翻弄できるとは思いもしませんでした。アルム殿の策は素晴らしいですが……元は帝国民なのですよね? もしも敵だったらと思うと、ぞっとします」

「褒めすぎですよ。今回は、たまたまうまくいっただけですよ」

「そのたまたまが、ずっと続いているように……アルム殿が何度も起こしているように見えますが」

「俺はただの執事ですからね。本当は、戦闘は専門外です」

「専門外でコレですから、しっかりと取り組んだらどれだけすごいことになるか……いやはや。本当に恐ろしい」


 騎士は苦笑していた。


 うーん。

 謙遜をしているわけじゃないんだけどな。


「とにかく、あなたが敵でなくてよかった。そして、味方であることがとても頼もしい。一緒に戦えることを光栄に思います」

「俺もです。それに、安心してください。俺は今は王国の民ですから、帝国に味方するということは絶対にありえません。、そして……」


 ブリジット王女をちらりと見る。


「彼女を裏切ることは絶対にありません」

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