233話 こういうのは得意
「諜報活動なら、ボクも手伝うよ」
不敵な表情でそう言うと、パルフェ王女は小瓶を取り出した。
中に収められている液体は、魔力が大量に満ちた、特殊なポーションだ。
こちらもシロ王女が開発したものだ。
「おいで」
パルフェ王女は小瓶を使い、特殊な魔法陣を描いた。
召喚陣だ。
魔法陣が輝いて……
そこから、どこにでもいるような小鳥が三羽、現れる。
「わー、可愛い♪」
「これは……?」
「ボクの使い魔、ってところかな」
魔法使いでもないのに、使い魔を従えているのか?
たぶん、パルフェ王女の研究成果なのだろう。
そのようなことができるとは……
改めて彼女の能力の高さに驚く。
「この子達は、数倍の速さで飛べるとか水の中に潜れるとか、そういう特殊能力は持っていないけど……一点、とても優れているところがあるんだよ。なんだと思う?」
パルフェ王女は、今すぐにでも説明したい! という感じで、うずうずとした様子だ。
それでも、こうしてクイズ形式するのは、彼女の性格によるものだろう。
自分の成果を自慢したい。
でも、楽しみも忘れたくない。
「うーん……魔法を使える、とか?」
「姉さん、惜しい!」
「では、道具でしょうか?」
「ちょっと離れたかな」
ちっちっち、とパルフェ王女が舌を鳴らす。
その動きに合わせて、小鳥達も頭を振っていた。
「……もしかして、とても知能が高い?」
「正解!」
よくぞ当ててくれました。
これで説明することができる!
そんな感じの笑顔で、パルフェ王女がさっそく説明を始めた。
「この子達は、特別な能力を持っていない。でも、その知能はすさまじく高いんだよ。具体的に言うと、ボク達、人間と同じくらい」
「えっ!? それ、本当に……?」
「もちろんさ」
「んー……?」
ブリジット王女が小鳥達に顔を近づけた。
すると小鳥達は、カーテシーをするかのように羽を広げて、頭を下げてみせた。
「わっ、すごい!」
「ふっふっふ、これぞボクの研究の成果! ここに至る道は長く、苦難の連続だった……例えば」
「パルフェ王女、その説明はまた今度で」
「……うん」
とても寂しそうな顔をされてしまった。
語りたい気持ちはわかるつもりなのだけど……
いつまでも滞在できるわけじゃないから、行動は早く早くにしておきたい。
「じゃあ、いっておいで」
パルフェ王女の合図で、小鳥達が空に飛んだ。
三方に散り、すぐに見えなくなる。
「ボク達はボク達で、外交をしつつ、できる限りの情報を集めようか」
「うん、そうだね。ヘイムダル法国は、シロちゃんの件に絡んでいるかもしれないし……アルム君は?」
「色々と調査してみたいと思います」
「大丈夫? ここ、敵地のようなものだけど……」
「問題ありません。執事教育を受ける時、諜報活動も学んだので」
「……ねえ、パルフェ。執事って、諜報活動を学ぶものだっけ?」
「……アルムに関しては、もう今更じゃないかな」
「……それもそうだね」
二人は、なぜか遠い目をしてしまう。
俺はなにもしていないよな……?
「では、少し出てきます」
「うん、気をつけてね」
「無理はしないように」
二人に見送られて、俺は諜報活動に出た。