220話 不穏な流れ
その後……
シロ王女は、ブリジット王女とパルフェ王女。
それと、ゴルドフィア王に新型の魔石についての話をしたらしい。
会議は数時間に及び……
しかし、即日に答えを出せるようなものではなくて、結論は保留になった。
色々と問題はある。
トラブルも起きるかもしれない。
しかし、俺個人としては、シロ王女の発明が日を見てほしいと願うのだった。
……そんなある日、事件は起きる。
――――――――――
「ふんふ~ん♪」
鼻歌を歌いつつ、シロは中庭を散歩していた。
体を動かすことは苦手だけど、散歩は好きだ。
心がスッキリする。
軽やかな気持ちになることができる。
研究に行き詰まった時は、ちょくちょく中庭や城の中を歩いていた。
今現在も散歩中だ。
新しい掃除道具を思いついたのだけど、うまく接合できず、失敗。
そんな時は、無理をしない方がいい。
一度手を止めて、のんびり過ごす。
そうすると、意外と解決方法が浮かんでくるものだ。
「あ、カブトムシさん!」
シロは笑顔になって、木に止まるカブトムシを近くで眺めた。
なかなか大きい個体だ。
捕まえて姉に見せてあげたい。
ただ、姉はああ見えて虫は苦手だ。
この前、大きなムカデを捕まえて見せに行ったら悲鳴をあげられた。
「お姉様、なんで虫さんが苦手なのかな? こんなに可愛いのに……もしかして、ムカデさんだからダメ? カブトムシさんならアリ?」
花は好き。
でも、それ以上に虫にロマンを感じる。
それがシロ。
ちょっと変わった女の子である。
シロは笑顔でカブトムシを眺めて、そっと手を伸ばして……
「……っ……」
突然、びくっと体を震わせた。
慌てた様子で周囲を見回す。
「えっと……?」
誰もいない。
そして、なにかが起きた様子もない。
「気のせい、かな……? 誰かに見られていたような……」
キョロキョロと周囲を見る。
しかし、彼女以外に人はいない。
木の陰に庭師が隠れているのでは?
そう思って探してみるが、しかし、人の姿はない。
「……うーん?」
シロは小首を傾げつつ、散歩を終えて中庭を後にした。
――――――――――
「……ふぅ」
シロが立ち去った後、中庭にヒカリが降り立つ。
その両手に黒装束の男をぶら下げていた。
「気づかれなかった、っすよね……? やっぱり、こういうことは知らない方がいいだろうし……よし。アニキに相談っす!」