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207話 地下の調査

 その夜、作戦を決行することにした。


 仕事を終えた後、俺とブリジット王女は部屋に戻る……ように見せかけて、俺だけ別行動を取った。


 その瞬間は誰にも見られていない。

 傍から見れば、俺とブリジット王女は部屋に戻ったように思えたはずだ。


 この辺り、ヒカリの隠密術を学んでおいて、助けられたところがあるな。


 ブリジット王女はベッドに物を入れて、枕のところに予備のウィッグを置いて、俺が寝ているように偽装。

 誰かが尋ねてきても、体調不良で横になっている、という言い訳ができる。


 まあ、それがどこまで通用するか不安なところはあるが……

 今は、うまくやってくれると信じるしかないだろう。


 そして俺は……


「さすがに、少し狭いな」


 這うようにして通気口の中を進んでいた。


 地下室は一般的なものより深く、それ故に通気口が設置されていた。

 しかも、こちらも一般的なものよりも大きい。


 ここを進めば警備の兵に気づかれることなく、侵入することができるだろう。


「とはいえ……これは、まるで物語に出てくるようなスパイだな」


 苦笑しつつ、先に進む。


 音を立てないように、慎重に。

 ゆっくりと、それでいて、できるだけ早く。


 ややあって、とある部屋の上に辿り着いた。


「これは……」


 隙間から部屋を覗く。


 いくつもの牢屋が見えた。

 空の牢もあれば、閉じ込められている人もいる。


 いずれも幼い子供達だ。

 粗末な服を着せられて、劣悪な環境の牢に押し込められている。

 その上で、手足を鎖で拘束されていた。


「……っ……」


 怒りが湧いてきて、このまま突撃したい衝動に駆られた。

 しかし、我慢する。


 あの子達は、奴隷として捕まった被害者だろう。

 ただ、あの子達とドレイク・アーガンハイドを繋ぐ線は、まだ薄い。


 屋敷の地下に牢を作り、そこに奴隷となる子供達を閉じ込めていた。

 無関係とは言わせないが……

 ドレイクが主導して行ったという証拠がない。

 部下が勝手にやったこと、と言い逃れをされてしまうかもしれない。

 そしてその場合、ドレイクの罪を立証することは難しい。


 無論、無罪というわけにはいかないが……

 主犯として裁くことはできないかもしれない。

 その場合、軽い罪となり、また奴隷犯罪に手を染める可能性がある。


 確実な証拠が必要だ。


「すまない。必ず助けるから、もう少し……!」


 俺はギリッと奥歯を噛みつつ、その場を離れた。




――――――――――




「ふぅ」


 地下の探索を終えて、俺は一階に戻ってきた。

 乱れた服やウィッグを整える。


「それなりの証拠は得たが……決定打には欠けるな」


 奴隷として捕らえられている子供達を見つけた。

 そのための牢を見つけた。

 また、裏社会に通じているであろう男達も見つけた。


 ただ、ドレイクが奴隷犯罪に関わっているという決定的な証拠がない。


「……ふむ」


 奴隷を売買する時は、必ず隷属の魔法。

 あるいは魔道具を使用するはずだ。


 そうでもしておかないと、奴隷に反旗を翻される可能性がある。


 隷属の魔法はとても難しい。

 禁止されていることもあり、使い手はほぼいない。


 いたとしても、莫大な魔力を必要とするため、何度も使えるものではない。

 奴隷一人一人に施すとしたら、あまりにも非効率的だ。


「なら、魔道具か」


 どこからか隷属の魔道具を購入しているはずだ。

 そして、それだけの重要なもの、部下に任せるとは思えない。

 ドレイク個人が取り引きを行っているはず。


 その帳簿を見つけ出すことができれば……


「証拠としては問題ないな」


 待っていろ……ドレイク・アーガンハイド。

 お前の悪事、必ず暴いてみせる。


 ブリジット王女の専属として、彼女が望まないことをさせるわけにはいかない。

 主の願うことを叶える……それが、執事としての役目だ。



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