202話 三国同盟
先日、フラウハイム王国とサンライズ王国。
それと、アカネイア同盟国の3つの国の間で同盟が結ばれた。
互いの繁栄を願い。
そのために力を貸すことを惜しむことなく。
それぞれが手を取り合い、前に進んでいく……そんな同盟だ。
今回の同盟が成立したことで、フラウハイム王国の国力は大きく強化された。
なにかしら問題が起きたとしても、大半は自力で対処できるだろう。
自力で対処できない問題が起きたとしても、その時は、サンライズ王国とアカネイア同盟国に助けを求めればいい。
もっとも……
サンライズ王国とアカネイア同盟国が危機に陥った場合は、フラウハイム王国が動かなくてはならない。
一方的に恩恵を得ることはできないが……
同盟とはそういうものだ。
相互扶助が当たり前。
それを良しと思えるためにも、また、今日から色々なことをがんばっていきたいと思う。
――――――――――
「悪徳貴族の調査……ですか?」
いつものように、ブリジット王女の執務室で仕事を手伝い……
一段落ついたところで、そんな話をされた。
「うん。ちょーーーっと、色々と問題を抱えている貴族はたくさんいるんだけど……その中でも、見逃せなくなってきた人がいるんだよね」
アーガンハイド家。
フラウハイム王国の貴族で、爵位は伯爵だ。
それなりの権力を持つ。
一見すると、彼は良き貴族としてとの力と権力を振るっているものの……
最近になり、きな臭い噂が流れるようになった。
ドレイクは奴隷の売買に手を染めている……と。
もちろん、フラウハイム王国では奴隷の売買は禁止だ。
それ以前に、奴隷という制度そのものが認められていない。
奴隷を所持、あるいは売買していたと判明したら、問答無用で爵位は剥奪。
その上、強制労働の刑が課せられるだろう。
「貴族が奴隷ですか……ブリジット王女の話を信じないわけではないのですが、あまりにもリスクがある話ではないかと思うのですが」
「うん、そうなんだよね。普通ならそう思うんだけど……あそこ、少し前に当主が変わったんだよ」
「当主が?」
「前の当主は、けっこうな歳だったからね。それで、少し前にその息子……ドレイクに当主の座が移ったんだ。そして、その頃から噂が流れ始めた」
「なるほど」
前当主は、奴隷に手を出すほど愚かではない。
しかし、現当主は手を出すほどに愚かなのだろう。
そう考えると納得できる。
代替わりをした途端、一気に没落する貴族というのは珍しくない。
今回もそのパターンかもしれない。
「それで、もしも本当だったら放っておけることじゃないから、ヒカリちゃんに調べてもらっていたんだけど……」
「申しわけないっす……特にこれといった証拠は」
「わぁ!?」
突然、ヒカリが現れてブリジット王女が驚いていた。
俺は、元々彼女の気配を感じ取っていたので驚くことはない。
「ひ、ヒカリちゃん……もう少し、心臓に優しい登場をしてもらえると嬉しいんだけど」
「失礼しましたっす……ただ、アニキならまったく驚かないというか、もっと気配を消すように、と怒られてしまうので」
「アルム君のせいだったんだね……」
ブリジット王女のジト目が痛い。
「……証拠が見つからなかったのか?」
「アルム君、話を逸らそうとしても無駄だからね。ヒカリちゃんの件は、後で、たっぷり話し合おうね♪」
……俺の命は、あと少しかもしれない。
「はい。ブリジット王女に命令されて、わりとギリギリのところまで探ったのですが、決定的な証拠は得ることができず……」
「うん? ということは、それなりの証拠は手に入れられたのか?」
「はいっす。ドレイク・アーガンハイドが奴隷に手を出していることは、ほぼほぼ確実っすね」
そう言って、ヒカリは調査資料を机の上に広げた。
ブリジット王女と二人でそれを確認して……思わず、眉をしかめてしまう。
それほどまでに書かれている内容は酷いものだった。
「ここまでなんて……」
「とはいえ、どれも状況証拠ばかり。ドレイク・アーガンハイドが直接関与しているという証拠はありませんね。部下が勝手にやったこと、と逃げられてしまうかもしれません」
「そう、そこが問題なんだよね。どうしようかな……?」
悩む俺達に、ヒカリが明るい声で言う。
「こういう時こそ、あれっすよ!」
「「あれ?」」




