201話 いつまでもあなたの側に
夜。
俺とブリジット王女は、二人で城の庭を散歩する。
「もうっ、シロちゃんったら……勢いであんなことをしちゃうなんて。しっかり叱っておいたけど、また、同じことをしそうで心配かも」
「正直、同じことを考えました」
「だよね……」
共に苦笑した。
とはいえ、シロ王女の行動力は見習いたいところだ。
俺も、もっとアグレッシブに動いていれば、ブリジット王女にもどかしい想いをさせなかったのだろうか?
「ねえ、アルム君」
「はい、なんでしょうか」
「それ」
「え?」
どれだ?
「その口調、なんとかならないの?」
「なんとか、と言われましても……俺は、ブリジット王女に仕える身ですから。この口調は当たり前のものかと」
「そうかもしれないけど……でも、アルム君は、私の恋人でもあるよね?」
「……そうですね」
まずい。
少し照れてしまった。
「なら、もうちょっと砕けた口調にしてほしいな。今のままだと距離感があるから」
「そう言われましても……」
今まで、ずっとこうしてきたのだ。
それを、いきなり変えるのは難しい。
「それに……確かに、その……ブリジット王女と交際を始めることになりましたが、それ以前に、あなたは俺の主なので……」
「簡単に口調は変えられない?」
「……すみません」
「ふふ」
望まない答えのはずなのに、ブリジット王女はくすりと笑う。
どこか機嫌が良さそうだ。
なぜ?
「やっぱり、アルム君はアルム君だね」
「どういう意味でしょうか?」
「そういう、困ったくらいに真面目なところ」
「……褒められているんですか?」
「もちろん♪」
ブリジット王女はにっこりと笑う。
「そういうところ、私は好きだよ」
「……っ……」
「もしかして、照れた?」
今度は、ニヤニヤと笑う。
くっ……わざとか。
ブリジット王女は聡明な人で、とても親しみやすい人柄をしているのだけど……
時折、子供のようになる。
今が、まさにそれだ。
いたずらを企んでいる子供といった感じ。
こうなると手強い……というか、俺では対処できない。
おとなしく降参するしかない。
「……はい、照れました」
「そっか。ふふ、照れちゃったんだ」
「嬉しそうですね?」
「そりゃ、嬉しいよ。だって……アルム君も私のことが好きだから、照れたんだよね?」
「……はい」
「だから嬉しいの。なんかこう、顔が勝手にニヤニヤー、ってなっちゃう」
「……可愛いですね」
「ふぇ!?」
ついつい漏れた本音に、今度はブリジット王女が赤くなる。
「……」
「……」
そこで沈黙。
なにを言えばいいかわからない、というのはお互いに同じだと思うのだけど……
ただ、気まずいということはない。
むしろ、温かい空気が流れていた。
「アルム君」
「ブリジット王女」
俺達は自然と手を繋いだ。
そのまま、もう少しの間、夜の散歩を楽しむのだった。




