200話 シロちゃん、大失敗!
「えっ!? お姉様とお兄ちゃん、パパに認められたの!?」
王の執務室を後にして……
たまたまシロ王女と出会い、さきほどの話をすると、ものすごく驚かれた。
その気持ち、すごく理解できます。
俺もまさか、あのゴルドフィア王が認めてくれるとは思っていませんでしたからね。
「えー……それじゃあ、シロ達の作戦、どうしよう……?」
「シロちゃんの作戦?」
「あっ……う、ううん。なんでもないよ?」
「……ちょっと待って」
慌ててこの場を立ち去ろうとするシロ王女を、ブリジット王女はがしっと捕まえた。
「なにを考えていたのか、なにをしようとしていたのか、お姉ちゃんに話してくれる?」
「お、お姉様……? 笑っているけど、笑っていない顔、怖い……」
シロ王女はがくりとうなだれて観念して……
そして、とんでもないことを考えていたことを話した。
「シロちゃん達が妾に立候補して、それでお父様の説得の後押しをするとか……はぁあああ」
ブリジット王女は頭に手をやりつつ、深いため息をこぼした。
気持ちはわかります。
俺も、同じことをしたい気持ちでいっぱいです。
まさか、俺達の知らないところでそんなことが進行していたなんて……
「だってだって、お姉様がお兄ちゃんを独り占めするなんてずるい! 私もお兄ちゃんのこと好きなのに! あとあと、それならお父様も数の有利で説得できるかなー、って」
「シロちゃんはすごいものを発明できるのに、時々、なんでこんなにおバカになっちゃうかなぁ……」
「ひどい!? お兄ちゃんからもなにか言って!」
「……申しわけありません」
「暗に肯定された!?」
がーんと、ショックを受けた様子でシロ王女はうなだれた。
いや、まあ……
仕方ないだろう?
もしもシロ王女の策が実行されていたら、その時は、今度こそゴルドフィア王は怒り狂っていただろう。
娘三人、プラス他の女性を一気に迎えます! なんて話、無茶苦茶すぎる。
「でもでも、シロの言うこと、正しいもん」
「うーん、それはそうなんだけど……」
「ブリジット王女!?」
まさかの発言。
ブリジット王女は、シロ王女の策を良しとしていたのだろうか?
「あ、違うよ? シロちゃんの策は、とんでもなくて、とてもじゃないけど了承できないけど……アルム君が側室を得る、っていうのは、わりと正しい意見なんだよね。王族の血をたくさん残す、っていうのは大事だから」
「? しかし、俺は平民です。ブリジット王女と結ばれたとしても、外からやってきた者というのは変わらず、血も変わりません。そのような血を増やしても……」
「うちは、そこまで血に強いこだわりはないからね。王族になった時点で、王族。血はあまり重要視されていないんだ」
「……変わっていますね」
「あはは、私もそう思うよ」
ブリジット王女曰く……
過去、平民と恋に落ちた王族がいたらしい。
しかし、身分の差や流れる血を問題に強引に引き離されて、破局したという。
その後、王国は数々の災厄に見舞われた。
それを罰と考えた当時の人達は、己の行いを反省。
過ちを繰り返さないように、考えを改めたのだとか。
「血にこだわるあまり、大事なことを忘れてはいけない……だから、お父様も私とアルム君の関係を認めてくれたんだと思う」
「なるほど」
「だから、アルム君が、その……私と結婚したら、側室を得ることも必要なの」
「えっと……ブリジット王女はどうなのですか?」
「アルム君以外に体を許すなんで、死んでも嫌っ」
「……ブリジット王女……」
「……アルム君……」
「シロがいるのに、ナチュラルにイチャつかないでー!?」
「「はっ」」
しまった、つい。
これが恋の魔力というやつか?
なんて恐ろしい。
「そういうわけだから、シロちゃんのやっていることは、ひとまず凍結」
「えー!?」
「側室の問題は考えなければいけないことだけど、まだまだ先のことだもの。今は、そういうのは後回しよ」
「うぅ……シロ、一生懸命考えたのに……」
「それと……」
ブリジット王女がにっこりと笑う。
「私の許可なく、私のアルム君に手を出そうとしたことは、ちょーーーっと許せないかなぁ? 事前に相談してくれればいいのに、それをしないっていうのはダメだよ? ちょっと、お話をしようか」
「お、お姉様……? えっと、その、シロは国のことを考えて……」
「嘘。自分のことを考えていたでしょう? ほら、こっちにいらっしゃい!」
「お、お兄ちゃん!?」
「……いってらっしゃいませ」
助けを求められる視線を向けられるものの、どうすることもできない。
「あああああぁーーーー!?」
俺は、ずるずると引きずられていくシロ王女を見送るしかなかった。




