198話 色々と予想外
ゴルドフィア王の私室に場所を変えた。
俺とブリジット王女は、相変わらず、だらだらと汗を流している。
怒られる?
それとも、斬られる?
話の流れ次第では、城内で大乱闘が勃発してしまう。
「で……どういうことだ?」
ゴルドフィア王に睨まれる。
今は帯剣していないもののの、なんなら拳があるぞ? という感じで、ぐぐっと握り拳を作っていた。
「えっと……お父様、これは……」
「ブリジットは黙っていなさい」
「……はぃ」
すごい。
あのブリジット王女が眼力に負けてしまうなんて。
……よし。
突然の展開ではあるが、どの道、ゴルドフィア王との対話は避けられない。
いつか話をしなければならないのだけど、それが『今』になったと思うことにしよう。
必ず認めてもらう。
追いつめられたせいか、妙に覚悟が決まる。
「説明をさせていただけませんか?」
「聞こう」
「実は……」
俺は、ブリジット王女との関係を説明した。
前々から惹かれ合っていたこと。
先日の見合いをきっかけに、想いを打ち明けたこと。
そして、恋仲になったこと。
それら、隠していたことを全て話した。
「……と、いうわけです」
「……」
沈黙が恐ろしい。
しかし、ここで負けるわけにはいかない。
「すぐに打ち明けることなく、裏で色々と画策していたことは謝罪いたします。しかし、その上でお願いいたします。どうか、ブリジット王女との交際を認めていただけないでしょうか?」
「お父様、お願い! 私は、私の立場をちゃんと理解しているつもり。でも……それでも、アルム君と一緒になりたいの! 王女だけど、でも、それ以前に一人の人間だから!」
「……」
ひとまず、俺達の想いは伝えた。
この後、なにを言われるだろうか?
どんな無茶振りをされるだろうか?
ごくりと息を飲む。
「……はぁ」
ややあって、ゴルドフィア王はため息をこぼす。
どこか諦めたような、疲れたような……そんなため息。
おや?
予想していた反応と違うな。
てっきり、掴みかかられるか、殴りかかられるか……
あるいは、いきなりの大乱闘に発展するか、そんなところを予想していたのだけど、そのどれでもない。
こんなゴルドフィア王は初めて見るな?
「……小僧」
「はい」
「覚悟はあるのか?」
「はい」
即答した。
ブリジット王女と結ばれるということは、王族の仲間入りを果たすということ。
そこで課せられる責務や重みは、俺が想像している以上のものだろう。
でも、俺はそれら、全てを受け止めてみせる。
その上で乗り越えてみせる。
ブリジット王女と一緒になるためならば、なんでもしよう。
そして、どんなことでも耐えられる。
「ブリジットも、同じか?」
「うん」
「そうか……まったく」
ゴルドフィア王は、やれやれと再びため息をこぼす。
再びの沈黙。
しばらくして、ぽつりとつぶやいた。
「好きにするといい」




