196話 現状はいかに?
数日後。
俺は、ゴルドフィア王から解放されて、いつものようにブリジット王女の専属に戻っていた。
仕事とはいえ、ブリジット王女と一緒にいられるのは嬉しい。
とはいえ、浮かれてはいられない。
仕事は仕事。
プライベートはプライベート。
きちんと分けて、とりかからないといけない。
「アルムくん、アルムくん」
「はい、なんでしょうか?」
「今、手一杯かもしれないんだけど、この書類もお願いしてもいいかな……?」
「ええ、問題ありませんよ。さきほどいただいた仕事なら、そろそろ終わるところなので」
「はやっ!? ふふふ、さすがアルムくんだね……」
どうして不敵そうな顔に……?
「ところで」
「はい」
「……最近、お父様に色々と呼び出されていたみたいだけど、どんな感じだったのかな?」
「そう、ですね……」
思い返して首を傾げてしまう。
「主に、王の仕事のサポートを任されたのですが……ただ、なぜあのようなことになったのか、自分でも理解できず……」
「そっか。お父様は、なにか言っていた?」
「いえ、特には」
「うーん……そっか」
なんだろう?
ブリジット王女は、なにかを隠しているような気がした。
しかし、なにを隠しているのか、それはわからない。
わかりやすい人なら、ある程度、思考を読むことは可能だが……
ブリジット王女は、わかりやすいようで深い考えをされる方だからな。
思考を読むことは難しい。
「そういえば」
「なになに!?」
「俺の気の所為かもしれませんが、俺に仕事を教えてくれているような気がしました」
「仕事を……?」
「直接、口で指導いただいたわけではないのですが……こう、職人がするように、見て覚えろ、という感じで。勘違いかもしれませんが」
「ほうほう、ふーむ」
ブリジット王女がニヤリと笑う。
だから、その表情はどういう意味なんですか?
「……もしかしたらだけど、お父様は、アルム君を認め始めているのかも」
「俺を?」
「そう。だから、自分の仕事も覚えてもらいたくて、そんなことをしているのかな?」
そうなのだろうか?
だとしたら、嬉しいことではあるが……
「しかし、なぜ突然?」
認めてもらえるようなことはしていない。
リシテアを退けた時も、ご苦労、の一言で終わったからな。
あの事件がきっかけではないだろう。
そうなると、次に起きた大きな手柄、というものはない。
「なんでだろうねー?」
ブリジット王女はニヤニヤしていた。
これは、絶対になにか知っているな?
今回の件、どうやら、ブリジット王女が関わっているみたいだ。
気になる。
すごく気になる。
しかし、主を問いただすなんてこと、できるわけがない。
「アルム君」
「はい」
「そろそろ、次の段階にいくよ!」
「え? それは、どういう意味ですか?」
「対お父様の説得!」
いつの間にそんなものを始めていたのだろうか。
いや。
この前のお見合いの帰り道、なんとかしなければいけない、とは話し合ったものの……
結局、詳細は決まらず、先送りになったはずなのだけど。
「実は……」
ブリジット王女は、ちょっと得意そうな顔をしつつ、考えていることを打ち明けてくれた。