192話 王族の秘密会議
……王都に帰還した私は、お父様にお見合いの結果を伝えて。
それから、私達は秘密の会議を開くことにした。
私、シロちゃん、パルフェ。
ヒカリちゃんとセラフィー。
アルム君に好意を寄せているであろうメンバーを召集した。
「では、これより、第一回あの過保護なお父様をなんとかしましょう、の会議を開きたいと思います」
「わー、ぱちぱちぱち!」
シロちゃんは乗り気で拍手をした。
ただ、パルフェとセラフィーは、なにしているんだこの人? みたいな顔をしている。
うん、わかっているよ?
自分でも、ちょっとあれかなー、とは思うよ?
でも今は、一人でも多くの知恵を借りたいんだよー!!!
「ほら? お父様って、私達の恋愛についてちょっとうざ……うるさいじゃない?」
「今、うざいって言おうとしたな」
「だね」
「はいそこの二人、人の話は静かに聞こうね」
パルフェとセラフィーは、こういう意地悪なところがあるから困る。
「そろそろなんとかした方がいいかな、と思って、みんなの知恵に期待したわけなのです」
「ま、楽しそうだから、俺は協力するのはいいけどな」
「ありがとう!」
「なんで、今になっていきなりそんなことを言い出したのか、そこは気になるなぁ?」
「……特に理由はないよ」
ついついセラフィーから目を逸らしてしまう。
すると、獲物を見つけた猛獣のような顔をして、セラフィーがニヤリと笑う。
「へぇ、理由はないのか?」
「ウン」
「本当に?」
「も、モチロン……」
「嘘だな」
やっぱりというか、見破られてしまった……
この子、野生動物並の勘を持つから、嘘を吐くことは究極的に難しいんだよね……とほほ。
「おら、洗いざらい話しちまいな。でないと、協力はできねーな」
「うぅ……わかったよ。ただ、絶対に他言無用でお願いするね?」
私は覚悟を決めて、アルム君と付き合い始めたことを打ち明けた。
皆の反応は……
「えええええぇっ!? お兄ちゃんは、シロと結婚する予定だったのに!」
「おめでとう、と祝福するところなのだけど……ふむ? なぜか、素直に喜べないね」
「人の恋路を邪魔する趣味はねーが、それでも、ちと納得できねーな」
やっぱりね。
みんな、こういう反応になると思っていた。
シロちゃんは、アルム君にストレートに好意を示していたし。
パルフェは自分の気持ちに鈍感だけど、なんだかんだ、アルム君のことを気に入っていた。
セラフィーは野生の獣のような感じで、アルム君のこと、番として見ていたからね。
「みんな、落ち着くっす」
成り行きを見守っていたヒカリちゃんが口を開いた。
「色々と思うところはあるかもしれないっすけど、自分達も、まだチャンスはあるっす」
「どういうことだい?」
「アニキがブリジット王女と結ばれれば、自然と王族の仲間入りに。そうなると、王族の血は多数残しておいた方がいいということで、側室が許可されるっす。つまり……?」
「へぇ……あたしらは側室としてチャンスがある、ってことか」
「んー……ま、それはそれでアリかな?」
「ぶぅー、シロ、お兄ちゃんの一番がいいのに。でも……側室でもお兄ちゃんに愛してもらえるなら、それでもいいかな?」
よかった。
どうにかこうにか、みんなの意見が一致したようだ。
ヒカリちゃんに大感謝。
「ただ、ここで問題があるっす」
「パパだね?」
「姉さんと付き合うだけでも大爆発しそうなのに、その上、ボクらを側室にするとなれば、間違いなく大噴火するね」
「あのおっさん、力はあるが、理性はわりと皆無だからなあ……あたしの親父を見習ってほしいぜ」
お父様、散々な言われよう。
でも、まったく擁護できない。
だって、事実だし。
「だから、どうにかこうにかお父様を説得。あるいは、納得させないといけないの。そこで、みんなの力を借りたいの」
「んー……シロはいいけど、みんなは?」
「ボクも構わないよ」
「王女様の理想的なルートを辿ることになるが……ま、いいか。乗ってやるよ、その話」
「ありがとう! みんな、本当にありがとう!」
私は何度も頭を下げて感謝した。
こうして……
対お父様の乙女同盟が結成されたのだった。