188話 結ばれる二人
「あなたのことが好きです」
「……ふぇ?」
想いを告げると、ブリジット王女は、ぽかーんと目を丸くした。
なにを言われたかわからない、というような反応だ。
聞こえなかった、ということはないだろうが……
もう一度、告げた方がいいだろうか?
「俺は、ブリジット王女のことを、異性として慕っています」
「……」
「ブリジット王女?」
なぜか反応がない。
ぽかーんとしたまま、固まってしまっている。
「はっ!?」
ややあって再起動した。
「ふぅ……最近、疲れているのかな? なんか、白昼夢を見ちゃったよ」
「どんな夢ですか?」
「私が勢いでアルム君に告白をして、アルム君も私に告白してくれる、そんな幸せな夢」
「えっと……それは夢ではないのですが」
「……」
再び硬直。
「えぇ!?」
「いえ、そこで驚かれても……」
これは、もしかして……
ブリジット王女は、俺以上に、こういう事態に疎く、弱いのだろうか?
あたふたとして。
頬を染めて。
あちらこちらに視線を飛ばして。
……なんて可愛いんだ、この人は。
抱きしめたい。
キスしたい。
そんな欲望が湧き上がってくるものの、さすがに、まだ暴走するわけにはいかない。
「俺は、ブリジット王女のことが好きです」
「あ……ぅ……」
「本気です。この想いに嘘偽りはありません」
「ひゃ……」
「ブリジット王女も同じ気持ちなら、どうか、応えていただけないでしょうか?」
「それは……」
迷いの表情。
影が見えた。
「そう、したいけど……でも、そうなると、お見合いは……そうなったら、もしかしたら、両国の関係が……」
「それでも、です」
王国に属する者として、俺は失格なのだろう。
こんなこと考えるべきではないのだろう。
それでも。
俺は、ブリジット王女のことが好きだ。
誰にも渡したくない。
俺だけを見てほしい。
自分の気持ちに気づいて、素直になるべきと知って……
今更、止まることはできない。
「どうか、俺の手を取っていただけませんか?」
「……アルム君……」
ブリジット王女は、俺の顔と手を交互に見た。
そっと手を伸ばして……
でも、途中で引き返して……
その繰り返しだ。
迷いが、覚悟が決められない様子。
だけど。
「……んっ!」
ブリジット王女は覚悟を決めた様子で、そっと……俺の手を取る。
「私も……アルム君が好き」
「……ブリジット王女……」
「だから、その……私の隣にいてくれるかな?」
「もちろん。俺は、キミの隣にずっといるよ」
今だけは主従関係を忘れて……
一人の男として、彼女に応えるのだった。
ブリジット王女の腰に手を回して、そっと抱き寄せて……
「……ん……」
二人の距離がゼロになる。
◆◇◆ お知らせ ◆◇◆
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