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184話 ごめん

「私、ヒカリは……アルム・アステニアのことを愛しています」


 それは、とてもまっすぐな告白だ。


 言葉の一つ一つが輝いているかのようで。

 込められた想いがとても優しくて。

 心を温かい色に染めてくれる。


「……ヒカリ……」

「私のことを……恋人にしてくれませんか?」


 ヒカリは、じっとこちらを見た。

 その瞳には熱が宿っていて……

 切ないながらも強い感情が窺えて……

 強く俺を求めていることが理解できた。


「……」


 すぐに返事をすることができず、考える。


 ヒカリは……正直なところ、可愛い。

 やや幼さが残るものの、とても可愛いと思う。

 きちんと化粧をして着飾れば、貴族にも負けないくらいの輝きを放つだろう。


 それに性格も良い。


 とてもまっすぐで。

 優しくて、温かくて。

 ちょっと抜けたところはあるものの、綺麗な心の持ち主だ。


 普通に考えて、断るなんてもったいない。

 ヒカリが恋人になれば、きっと、毎日がキラキラと輝くだろう。

 幸せな日々を送ることができるだろう。


 ……でも。


「ごめん」


 気がつけば、俺は頭を下げていた。


 ヒカリに好意を寄せられたことは、素直に嬉しいと思う。

 実際に付き合えば、たぶん、俺も彼女に惹かれていくと思う。


 ただ……


「俺は……他に好きな人がいるんだ」


 ブリジット王女に対する想いをなかったことにはできない。

 それを無視することはできない。


 叶わない恋だとしても。

 身分の差があったとしても。

 ……この想いを捨てることはできない。


 ブリジット王女がいたから、今の俺がいる。

 あの時、手を差し伸べてくれなければ……

 死んでいたか、あるいは、まったく別の、ろくでもない結末を迎えていただろう。


 彼女は恩人だ。


 それだけじゃなくて……

 ブリジット王女の笑顔が好きだ。


 優しくて、温かくて。

 とても落ち着くことができる。

 安心することができる。


 ずっと、ずっと……

 いつまでもブリジット王女と一緒にいたいと思う。


「だから、俺は……」

「了解っす」

「え」


 意外というか、ヒカリはあっさりとしたものだった。


 落ち込むわけではなくて。

 食い下がるわけでもなくて。

 俺の返事をあっさりと受け入れてしまう。


「えっと……ヒカリは、それでいいのか?」

「いいもなにも、アニキの答えが全てじゃないっすか。振られた以上、どうすることもできないっす」

「それは……まあ」


 理屈で言えばそうなのだけど。

 でも、そうやって簡単に納得できないからこそ、『恋』というのではないか?

 俺も、リシテアのことは、なかなか振り切れなかったのだけど……


「自分は、最初から答えがわかっていたので」

「最初から?」

「アニキが好きなのは、ブリジット王女でしょう?」

「ど、どうしてそれを……!?」

「いや、バレバレっす」


 なん、だと……!?


 俺の想いは誰にも悟られることなく、いつも通りの『俺』を、完璧に演じることができていたと思ったのだけど……

 そうではなかった、ということなのか……?


「アニキってなんでもできるっすけど、恋愛だけはぽんこつっていう弱点があったんすね」

「また言われた!?」

「にひひ、自分だけが知っている、アニキの弱点ですね」


 ヒカリは、にっこりと笑い……

 でも、その瞳に涙がにじむ。

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― 新着の感想 ―
[一言] ヒカリちゃん良い子… こんな良い子を振った分、 ちゃんと王女に気持ち伝えないと許さないんだから!
[良い点] ヒカリさん、素敵です。いつかいい人と出会える事を祈ってます。 [一言] アルムさん、恋愛にポンコツだけでなく、自分のチートを、理解してなさ過ぎ。
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