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181話 危機的なお見合い

 俺達は、特に問題なくサンライズ王国に到着した。


 その後、1日、城で休んで……

 それから、ブリジット王女とジーク王子の見合いが行われることに。


 俺は執事として。

 ヒカリは護衛として。

 それぞれ同席を許された。


 当然、ジーク王子も護衛とメイドを部屋の端に待機させている。


 そして、見合いが始まるのだけど……


「ブリジット王女、僕は、本気であなたのことを妻に迎えたいと思う」


 挨拶と軽い談笑。

 その後、ジーク王子は真面目な顔になって、そんな爆弾発言をしてくれた。


「えっと……」


 ブリジット王女が固まる。

 ややあって、笑顔を維持したまま尋ねる。


「それは……冗談ですか?」

「いや、本気だよ。さすがに、このような冗談は言わないさ」

「そう、ですよね……」


 ジーク王子は誠実な人だ。

 軽い冗談は口にするだろうけど、このような場で、あのような冗談を口にすることはない。

 言葉通り本気なのだろう。


「その……理由を聞かせてもらえますか? 私に好意を持っていた、なんていう展開はないですよね」

「そうですね……と、肯定するのは失礼な気がしますが。あ、いえ。しかし、人としては、とても好ましく思っています」

「ありがとうございます」

「僕は王族です。将来の相手を自分で選ぶことは難しく……その辺りのことはわかっていただけるかと」

「はい、もちろん」

「そんな中、ブリジット王女……あなたのことを思い浮かべました」

「私……ですか?」


 そこでなぜ自分が?

 そんな感じで、ブリジット王女は小首を傾げた。


「ブリジット王女は賢く、そして民に慕われている。そんなあなたとなら、きっといい関係を築いていくことができる」

「打算なんですね」

「そうですね、否定はしません」

「……すみません、意地悪を言いました」

「いえ。ただ……最初は打算かもしれません。両国のための、という名目がついてくるかもしれません。それでも、僕は、あなたのことを好きになる自信があります。きっと、あなたに恋をするでしょう」

「それは……」

「もちろん、ブリジット王女もそうとは言いません。あなたの心はあなたにしかわかりませんから。ただ……」


 ジーク王子は、ブリジット王女に手を差し出した。


「できることなら、僕の手を取っていただきたい」

「……」


 ブリジット王女は、差し出された手を見て、ジーク王子の顔と見比べて……

 それから、なぜか、ちらりとこちらを見た。


 今の……

 どういう意味なのだろう?

 なぜ、こちらを見る必要があったのか?

 謎だ。


「……少し、考えさせてもらっていいですか?」




――――――――――




 王女と王子の見合いだ。

 たったの一回で婚約が成立、なんてことはありえない。

 そこに至るまで、何度も何度も見合いを重ねていくだろう。


 ただ、次を望むかどうか。

 それは、ブリジット王女次第だ。


 ジーク王子は、これからも見合いを重ねていくことを望んでいるが……

 ブリジット王女が断るのなら、それはなかったことになる。


 逆に、もう一度くらいなら……と考えるのなら、見合いは継続される。

 そのもう一度がさらに続いて、最終的に……というパターンも考えられる。


 今回の見合い、ブリジット王女は顔合わせをして、そこで終わり、と言っていた。

 ゴルドフィア王もそれで問題ないと言っていたらしい。


 ただ……


 答えは保留になった。

 もしかしたら、見合いは継続されるかもしれない。

 そのまま続いていくかもしれない。


 そして、最終的に二人はゴールインを……


「アニキ」

「なんだ?」

「気持ちはわかるので、縄張りを意識する熊みたいに部屋の中をうろうろしないでほしいっす」

「そんなことは……」


 ……しているな。

 ヒカリに指摘されて、ようやく自分の行動に気がついた。


 夜。


 ブリジット王女は専用の客室に案内されて……

 執事と護衛である俺とヒカリは、また別の客室に案内された。


 ブリジット王女のところへ赴くことは不可能だ。

 緊急事態であれば別だけど……

 そんなこと、そうそう起きることではないし、起きてはいけない。


「……アニキは、ブリジット王女のことが気になるっすよね?」

「そ、それは……」

「隠さなくても、バレバレっすよ」

「……そんなにわかりやすいか?」

「ものすごく」


 なんてことだ。


 執事たるもの、常に冷静であれ。

 そう学んだはずなのに、まったく冷静になることができない。

 ヒカリに心を見抜かれてしまうくらいだ。


 と、その時。

 コンコンと扉をノックする音が響いた。

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