表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

172/287

172話 VSリシテア・その4

「……あはっ、あははははは!」


 リシテアの笑い声が響いた。


 その足元に俺達が倒れている。

 死者はいないものの、ほぼほぼ全員が重傷者だ。

 まともに動ける者は……いない。


「勝った! あたしの勝ちよ! あはっ♪ やっぱり、正義は勝つのね!」


 どの口が正義と言うか。

 ツッコミを入れたいけど、無駄な体力は使いたくない。


 俺は痛む全身を無視して立ち上がる。

 ただ、足はふらついていて、再び倒れてしまいそう。

 まともな戦闘は不可能で、歩くのがやっと、というような状態だ。


「ふふ。ぼろぼろね、アルム。それは、当然の報いよ」

「それは、俺の台詞なんだけどな」


 帝国が崩壊して。

 皇女の座を追われて。

 こんな辺境に追放されて。

 さらに魔物に堕ちて。


「今のリシテアは、全部、自業自得の結果だよ」

「あんたっていうヤツは……!!! どこまでも、あたしを苛つかせてくれるわねっ」

「だったら、どうする?」

「いたぶってあげる。泣いてごめんなさい、って言うまで……ね」


 リシテアが飛び込んできた。


 すでに俺に避ける力はない。

 まともに一撃を受けて、吹き飛ぶ。


 視界がぐるぐると上下左右に回転して……

 木の幹に激突して止まった。


「かはっ」

「まだ起きているわよね? 勝手に寝ないでよ」

「ぐっ……!」


 リシテアは俺を追いかけてきて、肩を踏みつけてきた。

 ゾウでも乗っているかのような力が加えられていて、振り払うことはできそうにない。


 ……でも、それでいい。


「ぐっ……あぁ!?」

「ねえ、アルム。今、どんな気分? あたしに足蹴にされて、嬉しい? 嬉しいわよね? だって、あんたの初恋はあたしなんだから! だから、あたしに構ってもらえて嬉しいわよね!? あはっ、あははははは!」

「……そう、だな」

「うん?」


 リシテアの言葉を素直に受け入れた。


「俺は……キミに恋をしていたよ」

「あら。やけに素直じゃない。命乞い?」

「いや……ただ、これが最後になるだろうから、伝えておきたくて」

「なによ」

「……あの時」


 家族を失い、たった一人になった時。

 リシテアが手を差し伸べてくれた。


 それが打算であったとしても。

 親に言われて、仕方なくだったとしても。


 それでも、俺は、リシテアに確かに救われたんだ。


 もしもあの時、誰にも助けてもらえず放置されていたら、死んでいただろう。

 うまく生き延びられたとしても、心が壊れていただろう。


「ありがとう、リシテア。キミが手を差し伸べてくれたことは、この先、なにがあっても忘れないよ。そして、キミという幼馴染がいたことも……忘れないよ」

「アルム、あんた……」


 リシテアが、ぽかんとした様子でこちらを見る。


 その瞳に負の感情はない。

 とても澄んだ色をしてて……

 幼い頃、一緒に遊んだ彼女が戻ってきたかのようだった。


 ……でも。

 終わりにしなければならない。


 俺のためにも。

 そして、彼女のためにも。


「……アースクリエイト、ウインドクリエイト」

「なっ!?」


 土属性と風属性の魔法を同時に唱えた。


 周囲の土が盛り上がり、俺とリシテアに絡みついてきた。

 さらに烈風がまとわりついて、俺達を拘束する。


「な、なにを……!? くっ、動けない……!」

「油断したな。勝利を確信して、下手に近づいてくるからだ」

「アルム、あんたまだ……!?」

「今だ!」


 俺の合図で、ヒカリが、セラフィーが、リセが。

 そして、騎士達が立ち上がる。


 皆、この時のために力を残していた。

 俺が体を張り、リシテアの動きを止める時を狙っていた。


「な、なによ……まだ動けるヤツがいたとしても、アルムがいる以上、攻撃なんて……まさか!?」

「悪いけど、付き合ってもらうぞ」

「あっ、あああああぁ!?」

「やれぇっ!!!」


 そして……

 攻撃の雨が降り注いだ。

◆◇◆ お知らせ ◆◇◆

再び新連載です。

『堕ちた聖女は復讐の刃を胸に抱く』


https://ncode.syosetu.com/n7621iw/


こちらも読んでもらえたら嬉しいです。

評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
◇◆◇ 新作はじめました ◇◆◇
『追放された回復役、なぜか最前線で拳を振るいます』

――口の悪さで追放されたヒーラー。
でも実は、拳ひとつで魔物を吹き飛ばす最強だった!?

ざまぁ・スカッと・無双好きの方にオススメです!

https://ncode.syosetu.com/n8290ko/
― 新着の感想 ―
[一言] クソ野郎が地獄に落ちるまであとわずか。
[一言] もはや「ここは誰?私はどこ?」がリシテアにとってのベストエンディングだろうな……。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ