171話 VSリシテア・その3
「ミナゴロシよっ!!!!!」
リシテアは獣のように吠えると、自分の身長以上はある巨大な岩を持ち上げた。
そして……投擲。
「っ……アースクリエイト!」
咄嗟に土の壁を作り出した。
しかし、そんなもので巨岩を止めることはできない。
土の壁は一瞬で砕かれてしまう。
ただ、その一瞬の間で安全圏に退避することができた。
他の騎士達も無事だ。
「おいおいおい……こいつは、とんでもねえな」
あのセラフィーが顔をこわばらせていた。
リシテアは、今、それほどの化け物になってしまった、ということか。
「アルム殿、まともに戦えば、どれだけの被害が出るか……いえ。倒せるかどうかも怪しいところかと」
「そう……ですね」
リセの言う通りだ。
リシテアを討伐するどころか、このままだと返り討ちもある。
どうにかして彼女の暴走を止めなければいけない。
でも、どうやって?
戦術は素人そのものだけど、それを補って余りある力を持っている。
その力だけで圧倒されてしまう。
どうする?
どうすればいい?
「……試してみるか」
とある策を思いついた。
ただ、事前に考えていたものではなくて、この場で咄嗟に思いついたものだ。
有効なのか、うまくいくのか、検討する時間なんてない。
ぶっつけ本番だ。
「……みんな、聞いてくれ」
リシテアに聞こえないように、小声で、ヒカリ、セラフィー、リセの三人に策を伝えた。
「あ、アニキ!? それは、さすがに……」
「面白いけどよ……ちと、まずいんじゃねえか?」
「自分は反対であります!」
「なら、これ以上の有効な策を今すぐに提示してほしい」
言葉はない。
それもそうだ。
こんな極限下の状況で、俺が口にした以上の有効な策なんて、そうそう思いつくはずがない。
思いつく人もいるだろうが、それは、戦術に長けた天才だ。
でも、俺達は、戦術に関しては凡人で……
今あるものを使い。
今できることをするしかない。
「いくぞ。これ以上は、敵が待ってくれない」
「アニキ! でも……」
「命令だ」
「……っ……」
俺はずるい。
こう言えば、ヒカリとセラフィーは逆らうことができない。
リセに対して、そこまでの権限は持っていないものの……
彼女も、俺の覚悟を感じ取ってくれているはず。
それを無駄にするようなことはしないだろう。
「皆さん、いいですか?」
リセから騎士達に策が伝えられた。
動揺が走るものの、それはすぐに収まる。
皆、覚悟を決めたのだろう。
「どいつもこいつも……ウットウシイノヨ!!!」
魔物と化したリシテアが再び突撃してきた。
風のように速い。
いや、それ以上だ。
音を置き去りにしてしまっている。
まっすぐに駆けてきて……
手前で急転換。
横に回り込み、複数の騎士達を殴り飛ばす。
「ぐあっ!?」
「ぎゃあ?!」
空高く騎士達が舞い上げられるものの、ヒカリがうまくキャッチした。
彼女には、臨機応変にフォローを頼んでおいた。
自分も含めて、皆が死なないようにしてほしい……と。
うまくやってくれているようで安心した。
「これ以上、好きにさせない!」
「今度こそ、ぶっとばしてやるぜ!」
「終わりにするであります!」
俺、セラフィー、リセの三人を先頭にして……
さらに複数の騎士を連れて、リシテアに攻撃をしかける。
その結果は……
◆◇◆ お知らせ ◆◇◆
再び新連載です。
『堕ちた聖女は復讐の刃を胸に抱く』
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