168話 成れの果て
翌日。
俺、ヒカリ、セラフィー、リセ。
そして、第一騎士団。
リシテアを探索、及び討伐するために城を出た。
目指す場所は、東の森林地帯。
ヒカリの調査で、そこで異変が起きている、という情報を掴んでいる。
パルフェ王女から借りている魔物も、森林地帯に近づくにつれて動きが活発になっていた。
やはり、リシテアは森林地帯にいるのだろう。
「アニキ、ここらでシロ王女が作った道具の出番では?」
「そうだな。みなさん、お願いします」
シロ王女が作ったという探知機は、かなり大掛かりなもので……
セッティング、及び起動は騎士団に任せることにした。
一人でやれる作業ではない。
あらかじめ訓練していたらしく、騎士達は手際よく装置を組み立てていく。
30分ほどで組み立て、試運転が完了した。
さすが、の一言に尽きる。
「いえいえ、アルム殿に比べたら、我々はもっと精進しなければなりません」
「アルム殿の普通に追いつくために、どれだけの鍛錬を重ねなければいけないか……」
不思議なことを言われたものの、まあ、気にしない。
これでリシテアの居場所が特定できる。
騎士達に頼み、さっそく装置を本起動してもらう。
その様子をじっと見守る。
「……っ! 反応、ありました!」
「本当ですか?」
「はい。皇女かどうか、それはわかりませんが……強力な魔物の反応が一つ。他にも魔物の反応はありますが、この個体は群を抜いています」
「場所は?」
「少々お待ちください。あまりにも魔力が大きいため、特定が難しく……っ!?」
装置を扱う騎士が顔色を変えた。
「場所は……ここの直上です!!!」
「なっ……」
騎士の悲鳴じみた声。
それと同時に、背中が震える。
凍るような恐怖。それと危機感。
それらが覆いかぶさるように降りてきて……
ゴガァッ!!!
なにかが装置を盛大に破壊した。
「ウインドクリエイト!」
舞い上がる土煙を、魔法で即座に散らす。
その奥から現れたものは……
「リシテア……なのか?」
ぼろぼろの服。
土に汚れた肌。
そして……血に濡れた髪。
リシテアらしき者が振り向いた。
それに合わせて、右の瞳に宿る光がゆらりと揺れる。
それは炎のようにゆらゆらと揺れていて、残影を残している。
それは、ニヤリと笑う。
「あら、アルムじゃない。ひさしぶりね、元気にしてた?」
こんな状況なのに、こんな姿をしているのに。
リシテアは、なんてことのないように声をかけてきた。
「……そういうリシテアは、元気そうだな」
「ええ、そうね。元気よ。そう、あたしはとても元気……ふっ、ふふふ。あははは!」
突然、リシテアは笑い声を響かせた。
唐突な行動に驚いて、そして恐怖にも似た感情を抱いて、動けなくなってしまう。
「ふぅ……そう、あたしは元気よ。さっきのようなことができるくらい、元気で、強くなったの」
「リシテア、お前は……」
「ドレスや靴を新調したいところね。お風呂に入って、髪も綺麗にしたいわ。この目は……まあ、悪くないわね。新しいあたしの象徴という風に考えれば、アリね」
リシテアは不敵に笑う。
そして、揺らめく瞳をこちらに向けてきた。
「ねえ、アルム。今のあたし、どう思う?」
「それは……」
「ほら、答えてよ。あたしがこうなることが、あんたの望みだったんでしょ? あんたの希望通り、あたしはこうなったのよ? だから……答えてよ」
リシテアの殺気が膨れ上がっていく。
後ろでヒカリ達が構えるのがわかった。
「あんたのせいで、あたしはこんなことになって……」
リシテアは声を震わせた。
体も震わせた。
拳を強く握り……
そして、俺を刺すように睨みつけてくる。
「あんたのせいで、あんたのせいで、あんたのせいで……あたしはぁっ!!!」
リシテアが、魂の叫びを放つ。
「コロシテヤルっっっ!!!!!」
◆◇◆ お知らせ ◆◇◆
再び新連載です。
『堕ちた聖女は復讐の刃を胸に抱く』
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