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158話 皇女の行方

「てめえだ、てめえのせいなんだよっ!」

「あう!?」


 フラウハイム王国とアカネイア同盟国の間にある廃村。

 そこで悲鳴が響いた。


 一人は、鎧に身を包む兵士だ。


 ただ、その鎧はまともに手入れをされていない。

 修理されていないだけではなくて、飛び散った泥もそのまま、汚れ放題だ。

 まともな姿ではない。


 そんな兵士に蹴られているのは……


「や、やめなさいよ……あたしを、誰だと思っているの? あたしは……皇女よ」


 リシテアだった。


 逃走時より、さらにドレスはボロボロに。

 もはや原型をトドメておらず、捨てられた布のようにしか見えない。


 靴はない、裸足だ。

 あちらこちらに傷があり、兵士と同じように泥で汚れている。


 帝国が健在だった頃は、皇女として宝石のように輝いていた。

 しかし今は、見る影もない。


「うるせえっ、皇女がなんだ!」

「そうだ、てめえらが無能なせいで、俺等は今、こんな目に遭っているんだぞ!」

「詫びろ! 俺達に詫びろ!」

「あうっ!?」


 兵士達は激高して、本来守るべき主を囲んで暴力を振るう。


 ただ、それも仕方のないことだ。

 皇族がもっとしっかりしていれば、革命を乗り切ることができたかもしれない。

 そもそも、革命そのものが起きていない可能性がある。


 日々、贅の限りを尽くして。

 民を顧みることなく。

 ただただ、己のやりたいことだけを続けていく。


 革命は、そんな皇族の愚かな政治が招いた結果だ。


 それに巻き込まれた兵士はたまったものではない。

 居場所を失い、同盟国や王国に追われる始末。

 命の危機と自由を奪われるかもしれないという恐怖でストレスは最高値だ。


 どうにかこうにか逃亡することができたものの、その次の行動が思い浮かばない。


 投降するか?

 しかし、元帝国兵がまともな扱いを受けるとは思えない。

 噂ではあるが、元帝国兵は厳重な処分を受けているとか。


 ただ、それはそれで仕方のない話である。


 原因の大半は、国をおもちゃのように扱った皇族にあるものの……

 兵士達もまた、甘い汁を吸い続けてきた。

 皇族の暴挙を諫めることなく、見て見ぬふりをして、金を稼いできた。


 ある意味で同罪だ。


 故に、同盟国も王国も容赦はしない。

 犯罪者と同等の扱いをして、厳しい沙汰を下す。


「くそっ、くそっ!」

「あうっ!? や、やめ……ひぃ!?」


 現実はどうしようもない。

 完全に詰んでいた。


 そのことが兵士達の苛立ちを募らせて、八つ当たりとして、リシテアに暴力を振るう結果となっていた。

 女性としての暴力を受けていないことは、あるいは、まだ救いなのかもしれない。


「おい、その辺にしておけ」

「隊長、しかし……!」


 奥からやってきたのは、一回り体の大きい兵士だ。

 他の者と同じく汚れ果てているものの、落ち着いた雰囲気をまとい、風格がある。


「そんなでも、元皇女だ。使い道はある。だからこそ、生かして捕らえたんだ」


 逃亡する兵士達は、偶然、リシテアを見つけた。


 リシテアは、これ幸いと自分を守るように命じたものの……

 そんな命令を守る兵士なんて、もう、誰もいない。


 彼女を『道具』として活用するために捕らえて……

 そして、たまに、こうして鬱憤を晴らすために利用していた。


「同盟国に売るにしろ王国に売るにしろ、生きていた方がいいだろ。やるなとは言わんが、ほどほどにしておけよ」

「た、たすけ……」


 リシテアが兵士の隊長に手を伸ばす。


 しかし、隊長はドブネズミを見るような視線を返した。


「悪いが……本音を言うと、俺も、そいつらと同じようにあんたを思い切り蹴って殴って犯したいところなんだ」

「な、なんで……」

「ここまできて、まだ自覚がないのか……ほんと、救えないな」


 隊長は吐き捨てるように言い、その場を立ち去る。


 残された兵士達は、もう少し、リシテアで遊ぶことにした。

 暴力は止めて、その体に手を伸ばしていく。


「あ、あ……」


 それを見つめつつ、リシテアは考える。

 疑問に思う。


 どうしてこんなことに?

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― 新着の感想 ―
[良い点] とりあえずザマア!と思ってしまったw
[一言] ここまでされてまだ理解できないとは相当ヤバいですね
[一言] クソ皇女に無残な死を!
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