156話 アカネイア同盟国
1ヶ月後。
帝国は完全に解体されて、歴史から消えることになった。
代わりに、アカネイア同盟国という国が誕生する。
元々、帝国はいくつもの国が併合されてできた国だ。
侵略を繰り返して、国を吸収して、領土を広げてきた。
帝国が解体されたことで、それらの国は自治権を取り戻したものの……
すでに力を失っていて、独自に立ち上がることは難しい。
ならば、同じ立場の者で手を取り合い、一緒に立ち上がるのはどうだろう?
そんな発想から、帝国の元になっていた国々が協力をして、同盟を結び……
そして、アカネイアという巨大な国ができあがる。
以前の過ちを繰り返さないため、君主は一人ではない。
四人の統治者がいて、それぞれが等しい権力を持つ。
共和国制度に似ているだろうか?
こうして、ベルグラード帝国は消えて……
新たにアカネイア同盟国が建国されることになった。
――――――――――
「はじめまして。自分は、アカネイア同盟国、第三騎士団隊長、リセ・エンゲージと申します」
アカネイア同盟国からやってきた使者は、ピシリと背を伸ばして敬礼をしてみせた。
とても礼儀正しい人物のようだ。
あれからブリジット王女はライラに連絡を取り、協力者の要請をして……
快諾されて、彼女が派遣されてきた。
「はじめまして。フラウハイム王国、第一王女のブリジット・スタイン・フラウハイムです。こちらは、私の専属執事のアルム・アステニアです」
ブリジット王女の執務室で顔合わせが行われた。
「よろしくお願いします、アルム殿」
「こちらこそ」
リセと握手を交わす。
すると、なぜか驚いた顔をされてしまう。
「どうかされましたか?」
「あ……失礼しました。とてもしっかりとした手で、とんでもなく鍛えられていることがわかったため、ついつい驚いてしまったのであります」
「え、そのようなことがわかるんですか?」
「はい。大雑把にではありますが」
この人、思っていた以上にすごい人なのかもしれない。
そして、ブリジット王女。
恥ずかしいのでドヤ顔はやめてください。
うちのアルム君はすごいんだよー、という自慢もしないでくださいね?
「求められていた資料については、すでにそちらの諜報員の方に渡してあります」
たぶん、ヒカリのことだろう。
「ありがとうございます。後で確認してみます」
「資料に記載されていないこと。また、さらなる詳細を知りたい場合は、自分に声をかけていただければ」
とても真面目な方だ。
セラフィーに見習ってほしい。
「アルム君。私は、リセさんとお話をしているから、その間に資料を確認してきたら?」
「そうしますね」
「え? しかし、あの資料は、全て読むのに数日はかかる量ですが……」
「大丈夫。それくらいなら、アルム君だと30分で終わるよ」
「ははは、王女は冗談が上手なのですね」
……なんて笑っていたリセだけど。
1時間後。
「……本当に、全て読んでしまわれたのですか?」
一度、席を外して、ヒカリの元を訪ねて。
資料に目を通して、戻り。
その内容を口にすると、リセが唖然とした表情に。
なにがおかしいのだろうか?
山のような資料は、時間をかけることなく読まなければいけない。
その後に、さらに多くの仕事が控えているからだ。
故に、速読術を学んだ。
「速読術というレベルではない気がいたしますが……なるほど。噂に違わぬ方のようだ」
「噂?」
「ライラ様から色々と聞いていまして」
どのような話なのか非常に気になる。
変なことは言っていないだろうな?
「同じ人間と思えない時があるかもしれないけど、気にしないように……と」
言われていた!
「確かにおかしいですね」
「納得しないでください……」
「あぁ!? こ、これは失礼いたしました! 自分、嘘は苦手でして」
フォローになっていない。
ちなみに……
ブリジット王女は肩を震わせて笑っていた。
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新連載です。
『ネットゲームのオフ会をしたら小学生がやってきた。事案ですか……?』
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