148話 緊急対策会議
「……と、いうわけで。お姉様がお兄ちゃんのこと、本気で好きになっちゃったっぽいの。いつかお兄ちゃんのお嫁さんになりたいシロとしては、これは、わりとガチで危ないと思うんだよ!」
「はぁ……」
城にある第三王女の部屋。
そこで、第三王女のシロは、ヒカリを相手に力説していた。
一方のヒカリは、「なんで自分がここに……?」と、若干、呆れ顔だ。
「聞いてる、ヒカリちゃん?」
「聞いているっすけど……自分、ここにいる意味、あるっすか?」
「もちろんだよ!」
シロは胸を張って言う。
「だって、今は、同じ仲間だからね」
「仲間?」
「お兄ちゃんを取られない同盟の仲間」
「妙な同盟にいつの間にか入れられていたっす……」
「だってだって、ヒカリちゃんも嫌だよね? お兄ちゃん、取られたくないよね? 好きだよね?」
「へぁ!?」
ぼんっ、とヒカリが耳まで真っ赤になる。
「い、いやいやいや!? 自分は、その、アニキを取られたくないとか好きとか、そんなだいそれたことはまったく考えていないというか……」
「嘘」
あたふたと言い訳するヒカリではあるが、シロに一刀両断されてしまう。
「ヒカリちゃんはお兄ちゃんが好き。この名探偵王女シロちゃんの目はごまかせないよ!」
「うぅ……」
「さあ、認めて。そうすれば楽になるよ」
騎士団の尋問を真似するシロ。
この前、偶然、犯罪者を問い詰めているところを見たのだ。
教育に悪いと、その場は追い出されたものの……
しっかりと影響を受けていた。
「……み、認めるっす。自分は……アニキが好きっす」
それは、ある意味で当然の流れだ。
ヒカリを暗い世界から引き上げてくれて。
正しく生きる道を示してくれて。
新しい名前をくれた。
ここまでされて好きにならないわけがない。
アルムのために働いているのは恩返しの意味もあるが、もっと単純に、好きな人の力になりたいという想いがある。
「そんなヒカリちゃんに、悲報だよ」
「ふぇ?」
「……お姉様が、お兄ちゃんを好き、って自覚したの」
「!?」
マジで!? と、ヒカリはショックを受けた。
元暗殺者ではあるが、一応、ヒカリは女の子だ。
色恋について理解しているところはある。
そんなヒカリから見て、ブリジットがアルムに惹かれているのは一目瞭然だった。
とはいえ、それを口にしたことはない。
万が一、「じゃあアルム君に告白する!」なんて展開になったら困るからだ。
しかし今、ブリジットはアルムに対する好意を自覚したという。
アルムはよくわからないが……
少なくとも、ブリジットのことを嫌ってはいないだろう。
異性としてある程度は意識しているような気もする。
このままだと、二人が付き合うのは時間の問題。
「事の深刻さを理解したみたいだね」
「ど、どうすれば……?」
「お姉様には悪いけど、なんとしても告白を阻止しないといけないの! シロ達の恋を叶えるために!」
「で、でも、阻止したとしても、自分達は……」
「うん、ライバルだね。でも、シロはお兄ちゃんを独り占めするつもりはないよ」
「え?」
「シロは王女だから、たくさんの人と結婚できるんだよ」
王家の血を残すために、王女であるシロは子供を産むことが望まれている。
もちろん、それはもっと先の未来ではあるが……
そして、たくさんの血を残すために、一人に限らず、たくさんの相手を求める。
それは貴族社会においてはよくあることだ。
王家も同じ考えを持つ者がいる。
現王、ゴルドフィアがそれを望んでいないため、娘達の自主性に任せているが……
その気になれば重婚が可能なのだ。
「つ、つまり……?」
「シロの味方になってくれれば、ヒカリちゃんもお兄ちゃんと結婚できるよ!」
「乗ったぁ!!!」
今日一番、大きな声が出るヒカリだった。
その後……
アルムをいかにして落とすか?
どうやってロリコンにするか?
そんな議題が真剣に討論された。
その結果がどうなったのか……
それはまだ、誰も知らない。