146話 やばい……
「……」
夜。
ブリジットは私室のベッドに横になっていた。
明かりの消えた部屋。
ただ、カーテンを少し開けているため、月明かりが差し込み、部屋全体がうっすらを見えていた。
そんな中、じっと天井を見つめる。
「……眠れない」
ベッドに横になり、そろそろ1時間が経とうとしていた。
それなのに、まったく眠気がやってこない。
とあることを考えているせいか、目は冴え渡る一方だ。
ブリジットはなにを考えているのか?
帝国の今後について?
王国との関係について?
いや、どれも違う。
もっともっと単純なこと。
ブリジットが夜も眠れなくなるほどに考えていることというのは……
「……アルム君……」
専属の執事のことだった。
元帝国民で、現在は王国民。
皇女に仕えていたものの、色々とあって、今はブリジットの専属執事だ。
規格外の能力を持っているものの、本人は、それをあまり自覚していない。
常に落ち着いているように見えるけれど、実は感情豊か。
心があまり表に出ないだけ。
能力だけではなくて、人を惹きつけるところがある。
わりと人見知りをする妹が、あっさりとアルムに懐いていた。
わりと変人でわが道をゆくパルフェが、アルムに強い興味を示していた。
最強の暗殺者は、アルムのおかげでヒカリという一人の少女に変わった。
他にも、たくさんの人が彼を慕っている。
それこそがアルムの本当の力なのかもしれない。
それはともかく。
アルムのことが自然と頭に思い浮かび、眠ることができない。
胸がドキドキする。
頬が勝手に熱くなる。
なぜだ?
きっかけは帝国の革命だ。
アルムは革命を参加させるために帝国へ赴いた。
一歩間違えれば死に至る危険な行いだ。
本音を言えば、ブリジットはアルムを止めたかった。
行くな。
私のそばにいること、と命令したかった。
でも、アルムのこれまでを考えると、それをすることはできず……
結果、許可を出して見送ることになった。
それから革命が成功するまでの間。
ブリジットはぼーっとすることが多くなり、仕事にも支障をきたしていた。
それだけアルムのことが心配で心配で心配なのだ。
己の専属ということは関係ない。
単純に、ブリジットは、アルム個人のことを心配していた。
たまらなく心配で。
自分の全てを預けているかのように、いつも気にかけていて。
気がつけば祈りを捧げて、また会えるようにと願い。
その事実に気がついた時……
「これって……もう、アレだよね……?」
アルムを一人の男性として見ている、ということだ。
「あーーー、あーあーあー、あうううーーー!?」
ブリジットはベッドの上で悶えた。
ゴロゴロと転がり、それはもう、盛大に悶えた。
自覚してしまったのだ。
ようやく、と言われるかもしれないが、自分の想いに気づいてしまったのだ。
「私は……アルム君が……」
『好き』と唇が形を作る。