143話 帝国の最後
その後……
ライラ達、革命軍は、皇帝と皇妃を捕らえたことを大きな声で喧伝してみせた。
帝国の象徴であり、最上位の指揮官。
その二人が捕らえられたとなると、帝国の敗北は必須だ。
残った兵士達は戦意喪失して、投降して……
あるいは逃亡した。
ここぞとばかりにセラフィーとヒカリが暴れて、逃亡する兵士達を次々と捕らえた。
それでも、全てを捕らえることは叶わない。
ただ、逃亡した兵士は少数だ。
反撃に出ることは難しい。
捜索はしなければいけないけれど、今後の火種になることはないと考えていいだろう。
そしてライラは、帝国軍と民衆の前で革命軍の勝利を宣言。
帝国の終わりを告げた。
後に、この戦いは『黎明戦争』と呼ばれることになり……
数百年に渡り繁栄を極めた帝国の歴史は、ここで終わることになった。
――――――――――
戦争終結から1週間後。
俺は、未だ帝国に滞在していた。
本来なら、すぐに王国へ帰るべきなのだけど……
皇帝と皇妃を捕らえることに成功した。
ただ、リシテアの行方は依然として知れない。
彼女のことが気になり、独自に捜索を進めていたのだ。
「……とはいえ、うまくいかないな」
非常用の通路を抜けた先は、廃棄された坑道に繋がっていて……
さらにそこを抜けた先は深い森。
足跡や匂いなどを頼りに追跡を試みようとしたけれど、失敗。
あまりに経路が複雑すぎるため、途中で痕跡を見失ってしまう。
その後も、何度か追跡を試みたものの、うまくいくことはなくて……
結局、1週間が経ってしまった。
「ふぅ……なかなかうまくいかないな」
リシテアは今、生きているのか?
それとも、どこかでひっそりと死んでしまったのか?
生死を確かめることができず、もやもやする。
とはいえ、仮に生きていたとしても、リシテアが皇女に返り咲くことは不可能だ。
帝国は解体の準備が進められていて、今後、新しい国となる予定だ。
帝国派の貴族の捕縛も順調に進んでいる。
彼女には、もう、なにも残されていない。
「……死んでいる方がマシだろう、と思う俺は薄情なのかもしれないな」
空を見上げて、ため息をこぼした。
「アニキー!」
「よっす」
城の中庭でのんびりしていると、ヒカリとセラフィーがやってきた。
一応、二人にもリシテアの捜索をお願いしていたのだけど……
「首尾は?」
「すまないっす……あちらこちら探したけど、どうにもこうにも……」
「わりーな。私は人探しは得意じゃないんだよ」
「そうか」
予想していた答え。
なので、落胆することはない。
「アニキ、これからどうするっすか? リシテアをもう少し探す?」
「いやー、無理じゃね? あれから1週間も経ってるし、私なら、とっくに遠い場所……別の国に逃げてるぜ」
「それは、まあ……」
「無駄は止めて、さっさと次の戦場に行こうぜ」
「いや、次の戦場があるようなこと、さも当たり前のように言われても……」
「ヒカリの言う通り、次の戦争なんてないぞ?」
「マジかよ!?」
ものすごくショックを受けているな。
バトルマニアのセラフィーにとっては、かなり大事なことらしい。
「とはいえ、戦闘がないわけじゃない」
「って、いうと?」
「帝国派の連中を全て捕らえたわけじゃないからな。半分くらいは逃げていると思う」
「……ど、どういうことっすか?」
ヒカリは頭の上に『?』マークを連打していた。
それを見て、セラフィーが鼻で笑う。
「はっ。そいつらが帝国を取り戻そうと戦いを仕掛けてくる、ってことだろ」
「な、なるほど」
「まあ、それはライラの仕事だけど……ブリジット王女も、王国も、見過ごすことはしないだろうな」
同盟関係は続いている。
そして、それはより一層強化されることを互いに望んでいるだろう。
「まだ……完全な平和は遠いな」