133話 運命の一日の始まり
作戦決行日。
ついに、この時が訪れた。
帝国の現体制を崩すための戦い。
帝国だけではなくて、王国の運命を決めるといってもいい。
「諸君、聞いてほしい!」
作戦決行前。
ライラが仲間達に呼びかける。
「私達は、これから帝都を攻める。目的は、皇帝、皇妃。そして、皇女リシテアだ!」
「皇族に刃を向けるということは、大罪人となるだろう。また、帝都が戦場となるため、もしかしたら犠牲が出てしまうかもしれない。私達の行いは悪である」
「しかし! 悪だとしても、突き進まなければならない時があると、私はそう信じている」
「帝国の未来のため……いや。帝国に住む人々の未来のため、私達は、あえて悪になろう!」
「飢えで子供が死ぬことのない未来を掴むために! 理不尽な暴力で涙が流れるのを止めるために! そして、全ての元凶である皇族を討つために!」
「もう一度言う。これは悪である!」
「けれど、同時に正義でもある! 私達が信じる、正しい義なのだ!」
「私は自分を信じて前に進む。しかし、一人では力が足りず、途中で力尽きてしまうだろう。だからどうか、皆の力を貸してほしい」
「一緒に帝国を取り戻そうではないか!!!」
「「「おおおおおぉーーーーー!!!」」」
―――――――――――
まず陽動部隊が動いた。
暁と合流して、帝国と法国の境界線へ。
作戦開始。
陽動部隊は帝国と法国に攻撃を仕掛けて……
それぞれ部隊を誘い出すことに成功。
そして、そのまま誤認させて、二つの部隊を衝突させることにも成功。
魔法による通信で、そのような連絡が届いた。
敵が餌に食らいついた。
ここで、俺達、本隊の出番だ。
百に満たない、数十人で帝都を攻める。
頭がおかしいと思われるかもしれないが、しかし、この数十人は選ばれた精鋭だ。
一騎当千とまではいかないけれど、手薄になった帝都を攻略することは可能。
「見えた、帝都だ!」
「ひゃっはー! 一番のりぃ!!!」
セラフィーが嬉々として駆けていき、門に大剣を叩きつけた。
兵士なんて無視だ。
「な、なんだお前は!?」
「あぁ、門が!?」
ビシ、バキィ! という門の悲鳴が聞こえてきて……
ゴガァッ!!!
たったの一撃で門が崩壊した。
帝国の防備が適当すぎるのか、あるいは、セラフィーの力がすさまじいのか。
「アニキ……自分、セラフィーのこと、姐さんって呼ぶっす」
「調子に乗りそうだからやめてくれ」
セラフィーに続いて、俺達も門へ。
残った敵兵を絞めて、意識を奪う。
ヒカリも同じように、最低限の打撃で意識を刈り取っていた。
元暗殺者ならではの技だ。
彼らは敵ではあるが、しかし、命令に従っているだけだ。
乱戦になればどうしようもないが……
そうでない今、できる限り命は奪いたくない。
ライラも同じ考えで、武器を奪い、敵兵を拘束する。
「甘いと思う?」
「いや、俺も同じ考えだ」
「なら、よかった」
互いに笑い、
「さあ、いこう」
門を制圧。
そのまま帝都内に突き進んでいく。