129話 合流
盗賊達は、結局、答えをすぐに出すことはなかった。
これから彼らがどんな道を歩くのか?
それはわからないが……
できるのなら、まっすぐ、誇れる生き方を選んでほしい。
「アニキはやっぱり優しいっすね」
「そうか?」
「そうっす! 自慢のアニキっす!」
ヒカリはにこにこ笑顔で、
「ぶっ殺した方が早くて、楽なんだけどなあ」
セラフィーは、相変わらず物騒だった。
――――――――――
さらに3日。
抜け道を使うことで、予想していた以上に早く、革命軍との合流ポイントに到着することができた。
そこは森の中にある小さな村だ。
木々を伐採することなく、合間に家を建てている。
おとぎ話に出てくるような、どこか神秘的で綺麗な村だ。
一応、獣避けの柵は建てられている。
ただ簡易なもので、強度はそれほど高くなさそうだ。
それに見張りもいない。
なんてことのない村。
ここが革命軍の拠点の一つとは、誰もわからないだろう。
「おや、旅の方ですかな?」
白髪の老人が声をかけてきた。
「ええ。各地を旅する商人です」
「ほうほう。どのような品を扱いで?」
「塩と胡椒。それと、帝国産のりんごですね」
「……」
俺の答えを受けて、老人がじっとこちらを見てきた。
プレッシャーを感じたのは一瞬。
すぐに柔和な顔になり、警戒を解いてくれる。
「あなた達でしたか、王国からの援軍というのは」
「正確に言うと、その一部です。別働隊で、暁という傭兵団が他所で合流する手はずになっています」
「なるほど、なるほど。では、こちらへどうぞ。あいにく、ライラ様は外に出ておりまして……夕方頃には戻ってくるかと」
「わかりました」
老人に案内される中、ヒカリがちょいちょいと俺の服を引く。
「アニキ、今のやりとりはどういうことっすか?」
「ばっかだなあ、お前。合言葉に決まってるだろ」
「セラフィー、正解だ。俺達が本当に味方かどうか、確かめるために、あらかじめ合言葉を決めておいたんだよ」
「なるほど」
「ヒカリは昔の仕事で、潜入とかもしていたんだろう? 合言葉を求められる場面もあったと思うけど、そういう時はどうしていたんだ?」
「強行突破っすね」
「おっ、いいねえ。私達、気が合いそうじゃねえか」
「そっすよね。細かい根回しとか苦手っす」
「それな。真正面から叩き潰した方がめっちゃ早いよな」
「早いし、楽っす!」
「だな!」
妙なところで意気投合していた。
まあ、この二人の連携はちょっと心配だったので、こういうところを見ると安心はできる。
……本番で短慮を見せないか、そこは心配ではあるが。
「こちらを宿としてお使いください」
「ありがとうございます」
案内されたのは、なんてことのない一軒家だ。
ただ、よく見ると、とても頑丈に作られているのがわかる。
基本は、土と木。
そこに石と鉄が織り交ぜられている。
いざという時は小さな砦として機能するのだろう。
あるいは避難所か。
「ふう、やっとベッドで眠れるぜ」
部屋に移動して、セラフィーはベッドに転がった。
それを真似するかのように、ヒカリもベッドに寝る。
「ふかふかですぅ……あぁ、この枕は自分をダメにするっす……」
「やべえ……めっちゃ眠い」
「なら、二人は休んでいてくれ。俺は少し出る」
「どこに行くっすか?」
「この村……拠点を見て回るだけだ」
「いってらっしゃいっす……」
「スヤァ……」
セラフィーはすでに寝ていた。
ヒカリも半分寝ているような声だ。
もう少し緊張感を持ってほしいのだけど……
まあ、ガチガチになるよりはマシか。
それに、いざという時はきちんとしてくれるだろう。
苦笑しつつ、俺は家の外に出た。
「もし」
少し歩いたところで、家まで案内してくれた老人に声をかけられた。
「少しお話したいことがあるのですが、よろしいでしょうか?」