127話 帝国への旅路
「おにーさん、挨拶は終わったか?」
「アニキ、おつかれさまっす!」
少し進んだところで、セラフィーとヒカリと合流する。
一応、気をきかせてくれたらしい。
ちなみに、セラフィーは最近、俺のことを『おにーさん』と呼ぶようになった。
作戦を一緒に進めて、俺の指示下に入るため、そう呼ぶことにしたとか。
正直、彼女の感性はよくわからない。
「終わったよ」
「じゃ、これで問題なく帝国に行けるな。よし、ぶち殺しにいこうぜ!」
「まてまてまて」
意気揚々と歩き出そうとしたセラフィーを慌てて止める。
「今回の目的、ちゃんと理解しているのか……?」
「帝国をぶっ潰すんだろ?」
「それは最終的な目的で、俺達は、革命軍に協力するんだよ。戦闘はあるだろうが、表立って戦うかどうかはわからない」
ライラの作戦、それと状況次第だ。
現状、俺達の出番はない。
後方でサポートの予定だ。
当たり前だ。
俺が表に出たら、フラウハイム王国の関与が疑われる。
白を切ることは可能だけど……
それでも、帝国に開戦の口実を与えかねない。
とはいえ、今回の作戦、絶対に失敗できない。
どうしようもないところまできたら、俺達も表に出て戦うことになるだろう。
そう説明すると、
「ちぇっ、つまらねーな。たくさんぶっ殺せると思ったのに」
「自分が言うのもなんですけど、とても物騒っす……」
「というか、この辺りは事前に説明されていたと思うが?」
「寝てた」
頭が痛い。
セラフィーが一緒で、本当に大丈夫だろうか?
「まっ、おにーさんは安心していいぜ。私がいる限り、勝ちは確実だからな。大船に乗ったつもりでいてくれ」
それが泥舟でないことを祈る。
――――――――――
王国を出て3日が経った。
帝国まで、おおよそ10日。
馬車は目立ち、いざという時に隠れられないため使えない。
ある程度の日数はかかってしまうが、それは仕方ない。
仕方ないのだけど……
「よぉ、兄ちゃん。両手に花で羨ましいねぇ、かわいそうな俺達にもおすそ分けしてくれよ」
「それと、ちょっと恵んでくれねえか? ここのところ不作でなぁ、食べるものがねえのさ。なぁに、有り金と荷物全部でいいぜ」
「もちろん、断るなんて選択肢はなしだ。わかってるな?」
こういう連中に引っかかってしまうのは、ややもどかしい。
こちらは急ぎの旅だというのに……
「おにーさん、殺す?」
「アニキ、処分するっすか?」
傭兵と元暗殺者は、とても物騒な回答に辿り着いていた。
いや。
できるのならそうしたいが、なるべく騒ぎは避けたい。
死体の処分も面倒だ。
「せっかくだから、連中に道案内を頼むことにしよう。この辺りを根城にする盗賊なら、地図に乗っていない抜け道を知っている可能性が高い」
「おぉ。さすが、アニキっす!」
「じゃあ、半分は殺す?」
「死体の処分も面倒なんだが……」
「なら、一人だけ残す?」
「増えているぞ」
セラフィーは戦いに飢えているようだ。
野生の獣よりも扱いが難しいな。
「おい、さっきからなにを喋ってやがる!」
「死にたくねえなら、金目のものと女、全部よこせ!」
「はぁ……ほどほどに手加減すること」
「あはっ、戦いだぁ!」
「ラジャーっす!」
セラフィーとヒカリが突撃して……
当たり前のことだけど、盗賊達はすぐに壊滅した。
可哀想に。
ヒカリはともかく、セラフィーに出会ったのが運の尽きだ。