表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

123/286

123話 後戻りはできない

 いつもの食堂にライラの姿があった。


 ただ、表情はとても硬い。

 笑顔というものを忘れてしまったかのようで、なんなら、ピリピリとした雰囲気すら放っていた。


「おまたせ」


 ブリジット王女は怯むことなく、ライラの対面に座る。

 笑顔で語りかけていた。


 俺はその横に座る。


 それぞれ注文をして、本題に入る。


「なにやら急用ってことだったけど、どうしたの?」

「……革命軍の一部が、リシテアによって潰されたわ」

「えっ」


 なるほど。

 だから、ライラは厳しい表情をしているわけか。


 そして……

 たぶん、ライラにこんな顔をさせている原因はリシテアなんだろうな。


「そんな……酷い」


 革命軍が隠れ蓑にしていた劇場を焼き払われた。

 革命軍の兵士だけではなくて、たまたま居合わせた一般人も虐殺された。


 一部始終を聞いたブリジット王女は、強い怒りと悲しみを覚えているようで、複雑な表情で唇を噛む。


「相手もバカじゃない。私達の存在に気づいて、打撃を与えるために色々と調べていたんでしょうね。そして、劇場の存在を突き止められて、ターゲットになってしまった」

「……革命軍として、どれほどの被害が?」

「三割くらいのダメージね」


 仲間のことを想っているらしく、ライラは強く拳を握っていた。


 その気持ちはわかるつもりだ。

 ヒカリや騎士団のみんなが同じ目に遭ったとしたら、俺は、冷静ではいられないだろう。


 ライラは、一見すると冷静そうに見えるものの、内では激情を抱えているだろう。

 こうして顔を合わせていると、それだけで彼女の怒りが伝わってくる。


「援助はいる?」

「いただけるとありがたいわ。でも、救援物資はいらないわ」

「え? でも……」

「近いうちに行動を起こすつもりよ」

「っ……!?」


 ライラの発言に、ブリジット王女は顔をこわばらせた。

 もしかしたら、俺も表情が変わっているかもしれない。


 行動を起こす。


 つまり、それは……

 現体制を打ち崩すための戦いを仕掛けるということ。


「大丈夫なの……? 3割って、かなりの打撃を受けたばかりなのに……」

「だからこそ、よ。私達、革命軍に打撃を与えたことで、リシテアは油断しているわ。これで私達がおとなしくなる、他の連中も静かになる、ってね。でも、それは大きな間違いよ」


 ライラは怒りと。

 そして、確かな決意を瞳に宿いて言う。


「リシテアは、決して超えてはならない一線を超えてしまった。なら、思い知らせてやらないといけないわ。自分が今いるところは、絶対無敵の居城ではなくて、砂上の楼閣であることを」

「……ライラ……」

「私達、革命軍はまだいいわ。いつでも命を落とす覚悟はしている。でも、一般人はまったくの無関係よ。自国民なのに、リシテアは情けをかけることなく、迷いもせず、容赦なく手にかけた。絶対に許せないわ」

「……うん、そうだね。許せないね」

「だから、今、やるわ」


 ライラが頷いて。

 そして、ブリジット王女も頷いた。

 二人の瞳に迷いはない。

 あるのは決意のみ。


 ……強いな。

 俺なら、ここまでの決断を即座に下すことはできない。

 迷って、迷って……そのまま迷い続けていただろう。


 でも、二人は違う。

 やるべきことを見つけて、選択して、その道を進む。

 その力がある。


 なら、俺は俺にできることをするだけだ。


「ブリジット王女」

「うん?」

「一つ、提案が」

「どうしたの、アルム君?」

「自分を……帝国に行かせてください」

評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
◇◆◇ 新作はじめました ◇◆◇
『追放された回復役、なぜか最前線で拳を振るいます』

――口の悪さで追放されたヒーラー。
でも実は、拳ひとつで魔物を吹き飛ばす最強だった!?

ざまぁ・スカッと・無双好きの方にオススメです!

https://ncode.syosetu.com/n8290ko/
― 新着の感想 ―
[一言] もはやクソ皇女は逆賊だから成敗するなら今しかないですな。
[一言] ここはアルムの男のみせ所。 そして、男を見せたアルム君に迫る女が現れて、王女の精神が大変なことに!!
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ