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119話 困った人

 無事、サンライズ王国の協力を取り付けることができた。

 準備に多少の時間はかかるものの、しっかりと動いてくれるだろう。


 大きな成果だ。


 フラウハイム王国へ戻り、ブリジット王女はそれらの情報を王達と共有した。

 もちろん、ライラに連絡を取ることも忘れない。


 準備は進んでいく。

 それと同時に、決着の時は着々と近づいていた。




――――――――――




「うーん……どうしよう?」


 パルフェ王女に呼ばれ、彼女の研究室を訪ねていた。


 なにやら悩んでいる様子だ。

 俺が部屋に入ってきたことにも気づいていない。


「パルフェ王女」

「ん? ……ああ、アルムか。よかった、来てくれたんだね」

「なにかあったのですか?」

「うん。実は今、ちょっと研究が行き詰まっていてね」

「はぁ……」


 それでなぜ、俺が呼ばれることになるのだろう?

 いくら執事でも、パルフェ王女の天才の助手は務まらない。


「ぜひ、アルムに手伝ってほしいんだ」

「俺にできることでしょうか?」

「というか、キミにしかできないこと」


 はて?

 そんなもの心当たりはないのだけど……

 いったい、パルフェ王女は俺になにを求めているのだろう?


「それじゃあ、そこの台に横になってくれる?」

「はい」


 言われた通り台に寝た。

 すると、パルフェ王女は、俺の手足を革ベルトで拘束してしまう。


 ……ものすごく嫌な予感がする。


「あの……パルフェ王女?」

「大丈夫、大丈夫。痛くしないから」

「それは、本来なら痛みを伴う行為をする、という意味ですか?」

「さてと、薬を用意して……」


 俺の質問に答えてくれませんかね?

 スルーされると、ますます疑惑が深くなるのだけど。


「よし、じゃあ始めようか」

「……その注射器はなんですか?」

「麻酔だよ。いくらアルムでも痛いと思うからね」

「もう片方の手に持っている、のこぎりのようなものは?」

「のこぎりだよ」

「それで、なにを切るつもりですか?」

「アルムの骨をちょっと……」

「失礼します」

「あぁ!?」


 革ベルトの拘束を強引に解いて、小屋を出ていこうとした。


 パルフェ王女が腰にしがみついて、引き止めてくる。


「待って待って待って!? 痛くないから、ほんのちょっと、先っちょだけ!」

「痛いに決まっているでしょう」

「麻酔があるから大丈夫! ……たぶん」

「その麻酔も、俺を実験台にするつもりなんですか?」

「てへ♪」

「さようなら」

「あああ!?」


 ずるずるとパルフェ王女を引きずる。

 なかなか諦めてくれないな。


「お願いだよー、ちょっとでいいんだよー」

「ちょっとでも、骨を削るなんてしたくありませんよ。いったい、なにをしているんですか?」

「アルムの体組織を使って、魔物を強化できないかなー、なんて」

「それ、俺の骨を使う必要があるんですか?」

「いや? 唾液でも問題ないかと」

「なら、どうして骨を?」

「せっかくだから新型の麻酔も試してみたいなー、って」

「さようなら」

「あああああ!?」


 なかなか離してくれないな、この人。


「ボクは王女なんだから、もっと敬っておくれよぉ」

「その人の言動によります」

「つまりボクは?」

「敬えません」

「ひど!?」


 ただ、まあ……

 こうして気楽に、気さくに話せるところは王女らしくないものの、そこがとても良いところではあると思う。


 パルフェ王女は研究者としてだけではなくて、人との距離が近いところも魅力的ではあると思う。


 そう考えると、フラウハイム王国の三王女は、皆、親しみやすい。

 この国の血筋が為せることなのだろうか?

 それとも、親の教育の影響なのか?


「まあ、唾液程度なら」

「本当かい!? じゃあ、この器具で……」

「やっぱり、さようならです」

「えぇ!?」


 妙な道具を取り出したパルフェ王女を見て、俺は前言撤回。

 小屋を後にするのだった。

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― 新着の感想 ―
[一言] 親の教育か。 帝国は最悪だよな。 断罪の必要あり、極刑以外ありえない連中だし。 それに引き換え、 この三王女は親しみやすいな。 僕っ娘王女のマッドなところはアレだけどな。
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