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117話 懇親試合・決着

「はぁあああああ!」


 裂帛の気合と共に、騎士は突きを放ってきた。


 一度だけではなくて複数。

 刃の嵐が襲う。


「むっ」


 さすがに速い。

 ソードブレイカーで相手の武器を破壊することは難しい。


 ただ、反撃に移ることができないわけではない。

 攻撃をきちんと見切り、避けて……タイミングを合わせて横から剣を蹴る。


「なっ!?」


 まさか、体ではなくて武器を攻撃されるとは思っていなかったのだろう。

 武器を手放すまいと耐えた結果、騎士の体勢が崩れた。


 そのまま武器を手放してくれれば、よし。

 そうでなかったとしても、予想外の攻撃に体勢を崩してくれたのなら、やはり、よし。


 地面を蹴り、一気に騎士に迫る。


 騎士は体勢を崩しながらも剣を振る。

 ダメージを与えることを目的としていない。

 牽制であり、俺の進撃ルートを制限するためのものだろう。


 ただ、この展開は読んでいた。


 再び地面を蹴り、今度は跳躍。

 今度は男の剣の上に乗る。


「!?!?!?」


 剣を足蹴にされるとは、微塵も思っていなかったのだろう。

 さきほどよりも強い動揺を覚えている様子で、騎士が唖然とした。


 その間に、俺は、剣を足場にして二度目の跳躍。

 騎士の背後に回り込み、その首に刃を突きつけた。


「……」

「……」


 沈黙。

 観客達も言葉を失う。


 ややあって、騎士は剣を手放した。

 そして両手をそっと上げる。


「まいった、降参だ」

「ありがとうございました」


 礼をして、互いの健闘を讃えて握手をした。


 瞬間、


「「「おおおぉーーー!!!」」」


 観客達のどよめき。

 歓声と拍手が送られてくる。


「なんていう戦いだ……まさか、この短時間で決着がついてしまうとは」

「しかし、少々、邪道ではないか? 騎士としての戦いに反しているような……」

「戦いに邪道も正道もないのではないかな? 勝者こそが正義ではある。まあ、人質を取るなどしたら、それはまた別の話ではあるが」

「うむ。それに、あの執事が見せた技術は、やろうと思っても実行できる者はそうそういないだろう。あの執事だけに許された力のように思えた」

「フラウハイム王国は、これほどの者を抱えているのか……ううむ、侮れん」


 称賛の言葉は嬉しいものの、くすぐったい気持ちだ。


 戦闘技術も、俺が、今まで積み重ねてきたものの一つだ。

 それを褒められるということは、俺そのものを……生きてきた時間を肯定されると同じ。

 だからこそ、素直に嬉しく思う。


「ふふんっ」


 なぜか、ブリジット王女がドヤ顔をしてた。

 自分の専属なんだぞ、と誇っているようだ。


 よかった。

 主に恥をかかせることはなかった。


「まいったよ」


 騎士が改めて握手を求めてきた。


「キミは強いな。単純な力だけではなくて、戦術も豊富だ。勉強させられたよ」

「いえ。こちらこそ、ありがとうございました。とても良い経験になりました」

「今度、訓練に付き合ってもらえるかな?」

「自分でよければ喜んで」


 こちらも握手をして……

 俺達の健闘を讃えて、観客からも再び拍手が。

 それはしばらくの間鳴り止むことはなくて、二つの国の未来を祝福しているかのようでもあった。

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