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114話 目障りなものは潰しましょう

「……」


 帝国。

 皇城の皇女の私室にリシテアの姿があった。


 普段はお菓子などをつまみ、のんびりと過ごしているのだけど……

 今は違う。

 不機嫌そうな顔をして、テーブルの上に広げた地図を睨んでいる。


 地図は帝国のものだった。

 いくらかのポイントに赤い印がつけられている。


「最近、ネズミがちょろちょろしてて、鬱陶しいわね」


 ネズミというのは帝国に悪意を持つ者のことだ。


 おぞましいことに、連中は街に潜んでいる。

 しかも、一人二人ではなくて、相応の数がいるとの報告を受けていた。

 騎士団でも、その全容は把握できていないらしい。


「まったく……どいつもこいつも無能なんだから!」


 リシテアは地図に向けてペンを叩きつけた。


 反乱軍が潜んでいるという情報は届いていた。

 しかし、その報告を受けたのはずいぶん前のことだ。

 とっくに殲滅されていると思っていたのだけど……

 未だ生き残っている。


 生き残っているだけではなくて、その勢力を拡大しているらしい。

 最近では、民衆は彼らの味方をするようになっているとか。


「気に食わない、気に食わない、気に食わない……ああもう、ものすごく気に食わないわ!」


 足元をネズミがちょろちょろしている。

 それだけではなくて、そのネズミは、こともあろうに噛みついてこようとしている。


 許せるわけがない。

 苛立たないはずがない。


「叩き潰すしかないわね」


 民衆が彼らの味方をしている?

 そんなことは関係ない。


 敵だ。

 反乱軍に正義なんてものがあるはずはない。


 叩き潰すことこそが正しい。

 唯一の正解の道だ。


「兵士はもちろん、その家族、恋人、友人……関わる者全てを潰してやるわ。そうよ、見せしめよ。それくらいしないと気が済まないし、バカなことを考えるものが後に出てきそうだし……ふふっ」


 リシテアは笑う。

 とても楽しそうに、にっこりと笑みを浮かべる。


 その笑みは、まさに女神のように美しいのだけど……


「なによりも、その方がとても楽しそう」


 口から発せられた台詞は悪魔のようだった。




――――――――――




 俺とブリジット王女は馬車に揺られ、再びサンライズ王国を目指していた。


 いよいよライラが動く。

 革命の成功率を少しでも上げるために、サンライズ王国にも協力を要請しなければいけない。


 以前、話をした時、ジーク王子もネネカ王女もとても協力的だった。

 たぶん、問題はないと思う。


 とはいえ、絶対と言いきれないわけで……

 うまくいくかどうか、やや不安ではあった。


「どうしたの、アルム君?」


 向かいに座るブリジット王女が身を乗り出して、こちらの顔を覗き込んできた。


「いえ……交渉がうまくいくかどうか、色々と考えていました」

「うまくいくよ」


 即答だ。

 ブリジット王女は、己の外交手腕に、それほどまでに自信があるのだろうか?


「だって、正義は勝つからね!」

「え?」


 いったい、なにを言っているのだろう?


「帝国の酷い行いは色々なところが知っている。サンライズ王国も例外じゃないよ」

「そうですが……とはいえ、今回の作戦はリスクがあまりにも高いです。以前、良い方向に話が進んでいたとはいえ、土壇場で断られる可能性もあるのでは?」

「たぶん、それはないと思うよ? だって、ジーク王子もネネカ王女も、とても計算高いからね」


 計算高いのなら、なおさら慎重になるのではないか?


 考えて……

 それから、ブリジット王女の思惑を理解した。


「大義の問題ですね?」

「正解」


 帝国は横暴な行動を繰り返して、あちらこちらに被害をもたらしていて……

 多くの場所で反感を買っている。

 サンライズ王国も、それなりの被害が出た。


 故に、帝国に大義はない。

 その行いは自らの首を締める行為であり、魔王と呼ぶべきような存在になりつつある。


 それを打ち倒す者がいるとしたら?

 それは、勇者と呼ばれ、称賛を集めることだろう。


「大義があるからこそ、動くことができる。多くの者を納得させることができる」

「逆に動かないと、なぜ悪を放置しておくのか? と非難されちゃう。こんなことでいいのか、ってね」

「良くも悪くも、大義があるからこそ、道筋が定められているのですね」

「ちょっとずるい話だけどね。でも……それだけ帝国はやりすぎたんだよ」


 昔から帝国は暴走気味ではあったが……

 ここ最近は特に酷い。 

 ブレーキが壊れた馬車のように止まることなく、暴走を続けて、被害を生み出し続けている。


「なんとかしても、止めないとだね」

「はい」


 リシテア。

 思えば、まだキミとの因縁が続いているような気がする。


 なればこそ、ここで終わりにしよう。

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