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111話 シロちゃんクッキング

「作りましょー、作りましょー、美味しいもの作りましょー」


 なんて。

 可愛らしい声で可愛らしい歌を歌うシロがいた。


 城のキッチンに立ち、料理人達がハラハラと見守る中、包丁でチョコを刻んでいく。


 同時に、小麦粉をベースにした生地を練り上げていく。

 そこに刻んだチョコを織り交ぜて、適度なマーブル模様を作り上げた。


 さらにチョコチップを包み込んで、こねこね。

 力が足りないので、シロは、全身の体重を乗せるように押していく。


「ふぅ」


 額から流れる汗を手の甲で拭う。


 慣れない作業にシロは疲れていた。

 それでも、その表情は笑顔だ。


「えへへ、お兄ちゃん、喜んでくれるかなー?」


 好きな人を思い浮かべ、料理をする。

 ついつい笑顔になってしまうのも仕方ない。

 大変な作業も苦ではない。


 ただ……


「くっ……シロがあのような笑顔を浮かべるとは。あの執事め……!」


 シロが料理をすると聞いて、こっそりと様子を見ていたゴルドフィアは、親の嫉妬を全開にさせていた。


 娘の成長は喜ばしい。

 しかし、いらぬ成長もしている。

 なんていうジレンマか。


「ねえねえ、これでいいの?」

「んー……うん、バッチリ!」


 シロの監督を務めていたブリジットは、笑顔でオーケーを出した。


 ちなみに、パルフェはいない。

 彼女は食べる専門なのだ。


「後は型を取って、焼くだけかな?」

「火加減は?」

「魔導具が調整してくれるから大丈夫。時間は気にしないといけないけどね」

「うん、わかった!」


 シロはにっこり笑うと、型を使い、色々な形に切り出していく。

 丸、三角、四角、星……そして、ハート。


「えへへー。お兄ちゃん、美味しいって言ってくれるといいな」

「絶対に言ってくれるよ。アルム君だからね」

「うん!」


 シロはアルムのことが好きだ。

 子供だから、とバカにしてはいけない。

 彼女は、一人の女性として、アルムに好意……愛情を抱いている。


 だからこそ、クッキーを作り、プレゼントしようとしているのだ。


 そのことをきちんと理解しているブリジットだけど、シロの手伝いをしていた。

 彼女はライバルだ。

 敵に塩を送るような真似なのだけど……


(でも、シロちゃんは可愛い妹だからね)


 姉としては放置することはできない。

 敵に塩を送ることになったとしても、大事な妹の笑顔が見たいのだ。


「お姉様、できた!」

「じゃあ、後は焼くだけだね」


 二人はクッキー作りを進めて……

 ほどなくして厨房に甘く良い匂いが漂うのだった。




――――――――――




「はい、お兄ちゃん。プレゼント♪」


 休憩中。

 シロ王女がやってきて、小さな包みを渡された。


「俺にですか?」

「うん!」

「えっと……ありがとうございます」


 なぜ、突然プレゼント?

 不思議に思うものの、シロ王女の気持ちは嬉しく、素直に受け取る。


「開けてもいいですか?」

「もちろん」

「では、失礼して……」


 包みを開けてみると、香ばしい匂いがふわっと舞う。

 綺麗な黄金色に焼けたクッキーが入っていた。


「クッキーですか。これ、もしかしてシロ王女が?」

「ふふーん!」

「すごいですね。とても美味しそうです」

「本当は、お姉様に手伝ってもらったんだ。でもでも、シロもがんばったんだよ?」

「とても素敵なことだと思います」

「えへへー」


 反射的に頭を撫でてしまったのだけど、シロ王女は嬉しそうにしているから、よしとしておこう。


「お兄ちゃん、食べてみて!」

「では……」


 さっそく、一つ食べてみた。


 サクサクで、ほどよい甘さ。

 チョコチップも入っているらしく、その触感が楽しい。


「どう……かな?」

「すごく美味しいですよ。ありがとうございます」

「やったー! えへへ、これで、お兄ちゃんの胃袋を鷲掴みにしちゃうね」


 笑顔のシロ王女。

 それこそが、なによりのプレゼントでもある。


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[一言] あず◯んがのちよきちを思い出してしまった
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