100話 VS暁
一番最初に動いたのはセラフィーだ。
餌を前にした犬のように、勢いよく飛び出してくる。
「すぐに倒れてくれないでよね!?」
セラフィーは巨大な大剣を叩きつけてきた。
刃で斬るのではなくて、重さで叩き潰す。
そんな攻撃方法だ。
腕に刃を通さない、薄いアーマーを身に着けているが……
さすがに、こんなものを相手にできない。
俺は横に跳んでセラフィーの攻撃を避けた。
しかし……
避けた先にカインが回り込んでいた。
両手に持つ双剣を、己の体の一部のように操る。
そこから繰り出される攻撃は変幻自在。
なおかつ高速。
完全に避けることができず、あちらこちらに切り傷を負う。
とはいえ、致命傷も重傷となる部分は全て回避した。
これくらいの傷、まったく問題ない。
「へぇ、私達のコンビネーションをしのぐんだ。大抵の人は、今のでやられちゃうんだけどねー。ふふっ、マジで楽しめそう♪」
「油断するな。それだけの強敵だ」
「わかってるよ。ものすごい……楽しみっ!!!」
笑みを浮かべつつ、セラフィーが再び突撃してきた。
速い。
さきほどよりもスピードが上がっている。
「せいっ、やぁあああああっ!!!!!」
セラフィーは大剣を横に構えると、自身を軸にして回転。
薙ぎ払ってくる。
咄嗟に体を沈めた。
ブゥンッ! と空気を叩く潰すような音と共に、大剣が頭の上を通り過ぎる。
しかし、セラフィーの攻撃はそれで終わらない。
今度は斜め。
上から下へ。
跳ね上がり、直上へ。
身長を超えるほどの巨大な大剣なのに、まるで重さを感じさせない動きだ。
本当は紙でできているんじゃないか? と疑いたくなる。
「くっ……!」
暴力という名の暴力を極限まで凝縮したかのような、セラフィーの猛攻。
その合間を縫うようにして、カインが鋭い攻撃を叩き込んでくる。
どうにかこうにか直撃は避けているものの、小さな傷はどんどん増えていった。
無理矢理に動いているところもあり、体に対する負担も大きい。
まずい。
ただでさえ厄介な相手なのに、コンビを組まれると、正直、対処のしようがない。
この二人、どうやって倒せばいい?
「ほらほらっ、もっと私を楽しませてよ!」
「あいにく、楽しませるために戦っているわけじゃない!」
とにかく、反撃に出ないとジリ貧だ。
嵐のような猛攻の間、わずかな隙を突いて蹴撃を叩き込む。
重りを外した上で、全力の一撃。
これで暁の団員達を蹴散らしてきた。
しかし……
「おっ、いいねぇ♪」
セラフィーは、あっさりとガードしてしまう。
いくらかの衝撃は伝わったようだけど、ダメージは通っていない。
なら、通じるまで攻撃を続ける!
「はぁあああっ!!!」
今度はこちらの番だ。
まずは、一番厄介なセラフィーを叩く。
地面を蹴り、彼女の懐に潜り込む。
セラフィーの武器は巨大な大剣だ。
ここまで接近されてしまうと、その意味を成さない。
左手でセラフィーを掴んで。
そして、右手を連打。
至近距離からの拳撃を連続で叩き込んでいく。
セラフィーは、あっさりと大剣を捨てて、両手でガードに専念する。
でも、ここまで来たら難しい。
というか、もう遅い。
連打に重ねる連打。
でも、それらは牽制。
そして、次に繋げる布石に過ぎない。
「このっ……!?」
セラフィーはちらりと横を見て、それから視線を戻す。
ガードを解いて、反撃に出ようとするが……
「甘い」
横からカインの一撃。
それは、セラフィーの視線で読んでいた。
彼女は相当な力を持つが、その力を頼りに大雑把な戦いを続けていたらしく、戦術が甘い。
現に、こうして仲間の援護を俺に読まれてしまっている。
カインの一撃を避けると同時に、蹴撃でカウンター。
こちらは時間稼ぎなので、大きく突き放すだけでいい。
「これで……」
セラフィーを掴んでいた左手を離す。
両手を合わせるようにして、構えて、大きく踏み込んで……
「どうだ!?」
全身の筋力をバネを使うようにして、全力の一撃を叩きつけた。
記念すべき100話です。
ここまで続けることができたのも、たくさんの応援をいただいたからです。
ありがとうございます!




