ねぇ、今どんな気持ち?
遅くなったな
アルトがバラモンズ学園に入学するときから遡ること少し前 分かりやすく具体的に言うと大体十年半前 もっと言えば三年と五ヶ月と十六日前のこと────
ドワーフ国家 レゴンド カミヤのルーファス モデル ホムンクルス研究所
「気分はどうだ?」
白衣を着る男は部屋の中央の長椅子に腰かける男に一言言う。
「なんや、住所でも特定されたんか?まずはピアノ準備してから言った方がええでそーゆーのは」
「いや気分だよ、気持ちじゃねぇ。誰がユユ●タ・スズキだ」
「........そうやなぁ、気分か........」
白衣を着た男 タダカツ・カミヤは転生直後の西の魔神王 アレックスに問いかける。
「........普通やで、ひねった答えやなくてごめんな」
「こんなに焦らしておいてそれはないよ、まったく.....」
カミヤはアレックスの返答を聞くなり、隣の部屋への扉を開ける。
ガチャ と音がした先にはオレンジの髪色を持つ少年がベッドに拘束されていた。
「うぐっ、、あが、、、あぐっ、、、、........ハァ、ハァ........」
カミヤは落ち着きを取り戻した少年の肩に手を置き、
「戻ったか?ベルク」
少年は顔から吹き出た多量の汗をベッド脇に置いてあるタオルで拭き、
「すまない、カミヤさん。これ以上バルバトスを抑え込むのは難しそうだ、、、この前はリコ隊長やルークにも危害を加えそうになった。こんな迷惑をかけるくらいならいっそ───」
「...そう悲観するな、ドナーが見つかった。
紹介する、元西の魔神王 アレックス」
カミヤは一歩下がり、逆にアレックスは一歩前に出る。
「アレックスや、今はナヴァル シーラインっちゅー。よろしゅう。」
「貴方が、、、移植後は自我が過剰なほどに抑えこまれることになるのですが、、次目覚める保証が無いのに、それは了承したんですか??」
ベルクの眼に再び希望が宿る。
「了承したで。話は聞いてる、『強制他人格』やろ。聞いたことないでその、、、バルバトスっちゅーヤツは」
カミヤは今までの情報を整理したノートに記載されたことを読み上げる。
「スキル 強制他人格
主 バルバトス、
自我が芽生えて数日の内に称号《輪廻》を取得、
神話によると神王ゼウスの右腕、
宿主の魔力を喰らい、宿主の魔力量に対し、自分の魔力がキャパオーバーした場合、体を自己崩壊させて別の宿主へ寄生する。
」
「手段は選んでられない。ベルクに少し残ってしまうのが癪だが、移せるだけ早めにアレックスにバルバトスを移植する!準備はいいな、二人とも!」
「はい」
「ええで、はよせーや」
──────
───
───時は現代に戻り、バラモンズ学園───
昼休みの時間帯、旧校舎の屋根の上で3つの影寝転んでいる。
「───そういえば今まであえて聞いてこなかったが──────」
俺はムクリとその場から起き上がり、
「君たち家の方は大丈夫かい?」
アリス、タルタロス両方の肩がビクンッと跳ね上がる。
「ダンマリする未来が見えたので、とりあえずタルタロスから話しなさい。」
「は、はい、、、」
タルタロスは手で後ろ髪をワシャワシャ掻きながら嫌そうに話す。
「...俺実は家出中なんですよ、親父と大喧嘩して........」
........青春、青春だなぁ。
「青い春を感じるな、、、決まり文句の うるっせぇ!クソジジイ! は言ってきたか?」
「何に青い春を感じてるか分かりませんが、そんなこと言ってませんよ。『家出してやる!』って言って玄関出たらこっちへ召喚させられたんですから。」
俺は『考えるヒト』が如く、考え込む。
俺はたった今、魔界に行きたくなった。
魔界に乗り込んで無関係なヒトが仲を取り持ってやるのも悪くない。
だが、それは俺の《モブ道》に反する。
できればアルトとして生まれた今は前世と違い、目立たずにヒッソリと暮らしたい。
だけどいつまでもこいつらを使い魔としてこっちへ置いておくには少なくとも関係者の許可が必要不可欠だ。
まだ聞いてはいないがアリスも訳アリっぽいし、できれば二人で誰にも邪魔されずに幸せになってほしい。
───
───
───よし、覚悟を決めよう
「お前ら、魔界に行くぞ!」
「え゛!?」
「タルタロス君の親への挨拶、えーと、ブツブツ───」
一週間の休暇を許可してもらうべく、学園長室へ転移する。
まず目に映ったのは、ネルスが不貞腐れてザニーに慰められている現場。
次にエイナスが学園長室を何かしらの魔道具で空間を拡張した所に設けたキッチンでフライドポテトを揚げている。
さらに学園長の机の前に土魔法で設置された台を取り囲むように、ロック、サリフ、デリアがいる。
そしてネルスが抜けてしまったであろう席にはカサンドラが座り、ナイターと元魔神王で麻雀をしている。
ネルスは半泣きで、ザニーの胸元に顔を埋めている。
職務怠慢は置いていて一応状況を聞くか。
「あー、ザニー何があったんだ?」
ザニーはネルスの頭を撫でながら答える。
「ネルスが河底撈魚を狙ってたらサリフが九蓮宝燈で和了ッたんすよ。」
「!?」
は?九蓮宝燈!?!?冗談で聞くヤツじゃねぇか。
麻雀は嗜む程度だが、控えめに言ってヤヴァイな。
俺ならソッコーやる気失くすわ。
だから普段冷静沈着なサリフがあんなラリってんのか。
嬉しすぎて逆立ちしながら足で蛸やってるぞ。
「えー、まぁー、そのぉ、、なんつーか御愁傷様。ネルス相手ならもうちょい強めに抱き締めて、無限ナデナデでどうにかなるぞ、頑張れよザニー」
「うす、」
俺は麻雀を楽しんでる四人の近くに寄る。
「ロックは脱退したからいいとして、デリア、サリフ。お前ら仕事しろよ。」
デリアは得意げに
「あ、私有給休暇取ってきたんで」
サリフは───うわキモ
「私は元々休日です、ヒューーーーー!!!!」
各々休みだそうだ。
カサンドラはたぶん家のヒトに言ってきたのだろう。
「とにかく、俺と使い魔達で魔界旅行行く事になったから。一週間学園を休むことになるからそこの死にかけのネルスに後で言っておいてくれ。」
ポテトを揚げ終えたエイナスがこちらに来る。
「分かりました、それではクラスの皆さんには家の都合ということで伝えておきます。」
これで準備は完了かな。
魔界の門を開く場所は、、、ここじゃ不味いしどっか適当な良い場所に、、、
あ、そうだ
「転移 ノースラベンド!」
転移が終わり、ノースラベンドへ着くが突如として違和感に襲われる。
........転移してから着くまでに予想の1.5倍の時間がかかったな。誰かに転移先を解読されたか?、、、
「どうかされましたか?ご主人様?」
「いや、なんでもない。きっと思い過ごしだ。それより門を開くぞ。離れてろ」
魔力を強固に練り上げて独自の魔法術式に流し込む。
「鬼門 最終段 璉峠戒刕門 開門」
高さ5メートルの扉が出現し、俺たちを吸い込む。
「いっくぞーーーー!!!!」
そうして俺たちは魔界へ誘われていった。
次回から新章魔界天界編始まります。乞うご期待!!




