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魔神王アルバート、モブになる  作者: 神谷悠人
学園編
57/62

リッコリコにしてあげる 1

テグラス家、ルドルフ家所有地


《安らぎの地》ノースラベンド 東側


特に近隣に村も存在せず、慎ましやかに流れる小川と見渡す限りの草原、辺り一面に咲き誇る花畑


───逃亡する場所としては良い場所だろう───


得意な闇魔法で家も建てた、この場所に似合う質素な家だ。

君が気に入ってくれると──────


「ぅ.....ん、、ん、」


「レイナ!、、、大丈夫かい?、」


僕の膝枕から起き上がると彼女は半眼を右手で擦りながらハッキリと告げる。


「何故···助けたのですか······」


リコに重い空気がのし掛かる。

相手からすれば本当に疑問なのだ、当然だ。

一度殺した(・・・)相手を助けるメリット

そんなものはこの世にない。


途端に息が苦しくなる


もうすぐで眼の焦点が合わなくなりそうだ


それでも、それでも言うって決めたんだ


もう僕は《強欲》なんかじゃない、ただの『リコ』なんだ。


言うんだ、絶対──────





「───君に興味を持ったんだ。」


「─────────え?───」


レイナからは素っ頓狂な声が帰ってくる。

驚くのも無理はない。

一度殺された身、殺してきた相手に抱く印象なんて「最悪」に決まってる。

でも僕は心に誓った、自分の気持ちに嘘はつかない。


もう、つかない。




「君があの日言ってくれた言葉が今でも頭から離れないんだ。例えそれが教会の謳い文句でも、僕は救われた。『これでやっと終われるんだ。』って思えた。無理なお願いだということは百も承知だ。それでも、僕とこれからの余生を、一緒に生きて欲しい。」


「、、はい───」


返ってきた応えは非常に単純だった。


「い、いいの、かい?、、」


恐る恐る聞き返すリコにレイナは笑顔を差し出した。


「───はい。私、世間では『死亡』として処理されちゃいましたので、帰る場所無いんですよ」


自身の七冠《神話》の何かしらの能力が消えたことを確認し、色々察したらしい。

若干恨めがましくこちらを見つめるレイナ


「す、すまない」


即座に謝る。

空気が重くなるからこの手の話題は避けようと思っていたのに、、、


「空気が重くなるからこの手の話題は避けようと思っていたのに───ですね?」


「うっ、」


「私のスキル『心眼』の前では貴方の心の中は既に私の掌の上です。気を付けた方が良いですよ?」


「······」


ついには黙ってしまった。

不意にクスクスとレイナが笑みを溢す


「!?、、?、、?」


「もう、冗談ですよ~、七冠の重くて苦しい責務から解放してくださったんです、寧ろ感謝しています。」


「そうか、、よかった───」


リコは酷く安堵する。

嫌われていたら、、なんて疑惑が頭の中で巣食っていたのが数分前。


僕は今──────


「高くない?」


「いや、丁度いいよ。」


膝枕をしてもらっています!!


........実は縁側で膝枕されるの結構憧れてたんだよね。

初膝枕の感想は───

とても柔らかくて、いつまでもいたくなるような、そんな───


ペシ


と、レイナから優しいチョップが入る。


「え、エッチ...」


「あ、ご、ごめん。。」


スキル『心眼』を前にして、あまり感想を語るのは危険だな。

するとレイナが長い髪を空いている左手でかきあげて質問をする。


「ねぇ、あなたはどうしてゼリエスタ教にいたの?

確かに殺した人の数は多いけど根っからの悪には見えないわ。」


レイナの持つ固有スキルが僕の犯罪歴を可視化させているのだろう。

僕はようやく重い口を開く。


「実は僕、最近まで自我が薄れていたんだ。」


「えっ?」


レイナの驚きを他所に話を続ける。


「自我がはっきりし始めたのはちょうど二年前。何か硬い物が後頭部に当たって、頭にかかっていた靄が急に晴れ始めたんだ。それに、、目の前を見たら人が血を流して倒れていて、、その瞬間に、、自分はとんでもないことをしでかしたんだって事に気づいて。。」


レイナは慎重に言葉を選ぶ。

七冠として世間的に優遇されてきた身だ、何を言っても暴力になるかもしれない。


「なにか、、靄のかかっていた状態で思い出せることはないの?、、」


「思い出せることは少ないけど、研究所みたいな暗い所で僕と一人、男の子が生き残ってて、、謎の空間で強い魔獣と戦うことを強いられてた。それ以外の子は皆訓練の途中で死んでしまった、気がする、、、」


予想以上に過酷な内容でレイナは絶句する。


「それに、、、僕も含めて一人一人がベイルート王国騎士団1個兵団に相当する。そんな化け物染みたヤツが複製されてたんだ。居住区のすぐ隣の研究棟でね。」


レイナは言葉を失う。

その情報が真実なら直ぐに対処しなければ戦争の火種になるだろう。

それも世界規模の。


「まぁ、その複製人間達の起動テストは当分先だ。って研究員の一人も言っていたし、問題ないとは思うけど、、」


ただ、とリコは続ける。


「どこに攻めてこようがここは安全だ、闇魔法で幻惑の結界を張ってあるから部外者はここにたどり着けないよ。」


「そ、そう、、」


少し安心するレイナ。

不安が完全に消え去った訳ではないが、もし敵が来たときには自分と彼を守る術を身に付けておかなければ。


それに、


「リコ? その、、首に書かれている文字はなに?」


リコは首の文字に右手で優しく触れる。


「僕の認識番号、、ってところかな。研究所の時のね。」


元闇徒 《強欲》のリコ


認識番号 PRMSC-001


タダカツ カミヤが開発したルーファスシリーズの量産型ホムンクルスのプロトタイプである。


Prototype Rufas Model Special Commander

の略です。


ロールアウトタイプは

Rufas Model Commander (RMC)

Rufas Model General (RMG)


です。

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