ウマレオチ
遅くなったぜ
400年前、ドワーフ国家 レゴンドにて───
「アニキ!、こんな凄いの見たことねぇぞ!なんじゃこりゃぁ!!」
200歳の若者ドワーフが工房に入るなり、目の前のソレを見て目を輝かせる。
見た目は普段彼らが製造しているモノと変わらないが、内部に秘めた22基の自立式相互監視型魔力核と微細なパーツの隅々にまで掘られている独立思考魔術が強者という強者を屠ることになるだろう。
また通常の約7倍もの魔力核は国一つを3分で滅ぼすことが可能で1機の製造コストはこれまでのモノとは比べ物にもならなかった。
「コイツはそこらのゴーレムとは違う。
1人で思考することも出来る、まさにゴーレムの完全体だ。シリーズネームは───」
アニキと呼ばれた鍛冶師は直ぐに工具を握り直し微調整に取りかかる。
膝蓋骨、鎖骨辺りのボルトをさらにきつく締め、思考に耽る。
「コイツは、、そうだな、、、《ルードウ鉄鉱石》と《ジルファスト系オリハルコン》をベースに造ったから──────《ルーファス》にしようか。」
若者ドワーフはソレを2度、3度見る。
アニキと呼ばれる人物がルーファスと単語を発した後に、まるで最初から自分の名前だったかのように理解し、キィ───ンと甲高い音を立てて起動し始めたのだった。
「す、すげぇ、起動しましたよ!、、、」
「自立系回路はスリープ状態でもしっかり動くみたいだな。」
するとゴーレムがなんの前触れもなくアニキと呼ばれる人物に跪く。
当然若者ドワーフは驚いて後ろに後ずさるが、アニキは逆に胸を張って前に出る。
「お前は今日からパーフェクトゴーレムだ。世のため、平和のため其の身を尽くせ。」
パーフェクトゴーレムの顔が静かに此方を向いて発声する。
「ノリトヲ、、」
アニキはニィと笑う。
成功だ、と喜びを右手の拳で噛み締める。
「 " ' 動き出せ " " " & rufas & " " " ' " 」
パーフェクトゴーレムは再度フロントカメラを煌めかせて発声機から標準スクリプトを出力する。
「オオセノままに、タダカツ・カミヤ様───」
──────
───
再び死の平原、アルトの結界内
「 敵を2体検知しました、排除します 」
アルトの結界にパーフェクトゴーレムが侵入する。
直ぐに2体の式神がアルトから対象を切り替える。
「うわ!パーフェクトゴーレム!?、、なにしに来たんだ!?」
アルゴ式神が直ぐに魔力を練り上げ掌から出力を開始する。
「フレイムファ──────」
詠唱を短縮しても尚、速度最適化を獲得したパーフェクトゴーレムには敵わず、ついにその右腕を切り取られた。
魔術回路が魔力を運ぶ途中で分断されたため、魔力が溢れてオーバーヒートが起こる。
「うぉ!? TUEEEEか? TUEEEEなのか!!いいぞ!いけいけ!!」
ベルクの使い魔(使い魔とは、、、無機物やんけ)だったよな?ベルク本人はどこにいるんだ?
というか風刃やりすぎて土魔法で造った天守閣が崩れそう。
「うひぉう!?」
驚いて変な声が出てしまったが、調子乗ってパーフェクトゴーレムを応援していたらユミエラ式神からの量産式神ウェーブが始まる。
百足と魚と?、、ビット(移動式超小型砲塔)?...最近の式神はわけが分からんな。
「 自立魔術起動 」
ユミエラ式神が唱えるとまるで生き物のように多量の式神がアルトを追い詰める。
機械作業のように淡々と式神達を落としていくアルト、しかし流石に結界構築と闇魔法使用、天守閣に付与した半永久的な風刃の出力。
アルトの魔力は既に常人と変わらない程まですり減っていた。
「ここからは魔力じゃなくて筋力勝負かな。。。よっと!」
魔力が普段の1/100程度になっているため、陰っぽい実力者(?)ではないものの、普段隠しているフィジカルを出していくアルト。
そして呟いてる途中にも8つ目のビット式神を叩き壊す。
「1byte───char分やったな!次はint分やってやるよ!!」
アルトがそう意気込んだ後、ユミエラ式神本人が此方に猛スピードで迫ってくる。
式神使いにとって術者本人が向かってくるのはネ○ロさんもビックリする悪手。
アルト(余程体術に自信があるのか?)
「 オートセーフ解除 最大出力 グラビティ 」
「がっ!?······」
ギリギリ耐えられる重力がアルトの身体を襲う。
無論、古代重力魔法に耐えられる筈もなく、天守閣は崩れ去り、刻んであった風刃の魔術回路が破壊され、攻撃が停止する。
最後の一撃を発動するかの如くユミエラ式神は掌を天に向け、詠唱を開始する。
「 サモン 独自式神 アルgz.g.j 」
詠唱完了寸前にゼイニスファニスを喉に投擲する。
鍔まで数cmの所で魔剣は勢いを失うも、詠唱を最後までさせないことには成功した。
しかしこれはあくまで予測だが、アルゴって言いかけてたよな。ユミエラ式神は別にもう一体アルゴ式神を出せるのか、、、
「反則だろ、、そういうことすると特級認定されて拘束されるぞ───うぉ!?」
先程までとは打って変わって、格段に動きが良くなったユミエラ式神。体内魔力を全て出しきって、身体強化の魔法を限界までかけている。
唐突な攻撃だったため、重力魔法を利用して結界の縁に足をつける。
「洒落になんねぇな、、、体術に関してアルゴ式神だけならマシだったけどユミエラ式神も体術出来るなんて聞いてないぞ。。。」
本当はパーフェクトゴーレムに加勢してほしいところだが、、、
彼はベルクの使い魔だからこちらの命令に従うか分からないし、仮に従ったとしてもその後見返りを要求されるリスクの方がデカい。
「 式神作成 銀零刀 」
、、、うわ、武器を式神として作ったのか?
そんなのなんでもありじゃねえか。
急いで床に突き刺さるゼイニスファニスを拾い上げて、応戦するも、依然としてユミエラ式神の勢いは止まらない。
クソ、、このままじゃ───
半ば諦めかけていた頃、ピュン!!という音がした後にユミエラ式神が滞空戦の場からその姿を消す。
パーフェクトゴーレムが何かしらの方法で光魔法系統の魔法を打ち出したらしい。
ユミエラ式神のこめかみには僅かながら貫通したような穴がみてとれた。
「おぅ、、ありがと、、よ、、、」
激戦続きだった俺は意識がその場から離れるまでそうかからなかった。




