異物混入
ばななぁ
死の平原 北西 森林地帯近く
森林地帯付近の山の崖の先、下を見下ろす男が4人いた。
《鬼神》オルヴァルド、
《雷神》ヘルヴィ、
《剣神》ゼルへナール、
《影砲》ナミザメ
彼らはかつてギルド登録から抹消され、死亡として処理された戦闘狂達。
王家直属の精鋭部隊《不死鳥》の隊員である。
隊員は全部で10名。
全員の背中に王家専用の『不老魔術』が刻まれており、普通の人間であるナミザメも150年の時が経った今もこうして生き永らえている。
「いいのかい?無視しても。また隊員が死ぬかもよ?」
オルヴァルドに声をかけたのはヘルヴィだ。
『死んだ隊員』というのは、前回の任務で放っておいた魔物が予想以上に強く、隊員の
《不死身》ラバン、《蒼雪》ウェルファ
が死亡したことを指している。
《不死鳥》所属の隊員は『不老』であっても『不死』ではないため貴重な戦力であることも含め、隊員死亡はあってはならないことである。
「あれは俺の判断ミスだと上に謝っただろ、今さら蒸し返すな。それに補充も来たんだ。悪かったって」
ヘルヴィは1機のゴーレムを目で追う。
ドワーフ国家 《レゴンド》の名匠が造る、ゴーレムの中でも最強と言われる《ルーファス》シリーズ。
パーフェクトゴーレムと呼ばれる程だ。
計画外なら排除、進路妨害等も視野に含めなければならない。
「一応聞くけど、あんな使い魔呼んだことは───」
「ない、俺が呼べたのは式神だ。アルゴ様とユミエラ様の、な。それにシノビ連合は想定外な事が起きない限り言われたことだけを遂行する。そういう組織だ。」
ヘルヴィは短剣を鞘から引き抜き、戦闘体勢に入る。
「へー···、じゃあさ、勝負だ。一番速くあの鉄屑を壊したヤツが国王からボーナスを貰えるっていう内容だ。じゃ」
『じゃあな!』を言い切る前に雷魔法で飛び出していったヘルヴィ。
「別に金目当てで動いているわけではないが、、まぁいいか。」
「僕も出るよ。ナミザメ、僕達が危なくなったら援護宜しくね。」
「...はいっす」
続けてオルヴァルド、ゼルへナールがヘルヴィの後を追う。
「有無を言わせずに自分は中立援護射撃なんすね、、、」
3人が去った後にボソリと呟くナミザメ。
ナミザメは援護射撃の為にスナイパーライフルを模した射出機を土魔法で造りだす。
風魔法で内部圧力を高め、小石を円錐形に加工して準備を完了させる。
「さ、腕の見せ所っす」
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──────
ビッ、バリッ!
脳に響く音を振り撒きながら光を凌駕する速さで木々の間を駆け抜けるヘルヴィ。
パーフェクトゴーレムのリアカメラが自分を執拗に追いかける物体を検知する。
「追跡者 検知
《雷神》ヘルヴィ 照合率 95%
任務遂行率 30%に低下
排除します」
「ハハッ、かかってこい!鉄屑ゥ!」
ガギィン!!
ヘルヴィの短剣───基、魔剣 《エズナマキア》がその効果を発揮する。
・名前:エズナマキア
・効果:一定の魔力を込め、60秒の周期で必中の斬撃を放つ。
エズナマキアが甲高い音を立ててパーフェクトゴーレムが刃を受け止めた左腕を切断する。
「!?、、」
「ハハハッ! 次は右腕だなぁ!!」
パーフェクトゴーレムは何が起きたか分からず、一旦後退し、ヘルヴィと距離を取る。
50秒間程にらみ合いが続いた後、一言
「······学習、解析完了 攻撃を再開します」
「ハッ!右腕いただき──────」
コツ
エズナマキアの必中の斬撃が不発に終わる。
正確には消滅───否、相殺された。
「ハァ!?──────」
ゴツッ!
「かっ、は、」
殴られた衝撃でヘルヴィの身体が宙に浮き、そのまま後退させられ木に激突して漸く止まる。
そして入れ替わるように、オルヴァルド、ゼルへナールが到着する。
「ヘルヴィでコレってことは、、」
「気を付けろゼルへナール、洒落にならない程強いぞ。」
オルヴァルドは空間魔法の収納空間から一つの魔剣を取り出す。
『あの日』、妻の死を嘆く親友が復讐を誓った証。
《魔剣》ヴェルネロード
その効果は発動中の魔法、魔術、魔術回路の強制停止
解説:魔術
魔法とは違い、起動、停止時以外に魔力を消費しない、直接対象物に紋様を刻む技術。
効果が半永久的に続くことと、術者の適正のない魔法も扱えるため、非常に優秀な技術だが、刻む紋様をかなり正確に刻むことができないと、暴発等の事故が起こるために使う人はあまり少ない。




