シノビ連合
おそくなったぜ★
死の平原
北西部
「まずいッ………!!まずいぞ!!」
バラモンズ学園の生徒としてではなく、
七冠 《永久》のベルクとしてでもなく、
今は闇徒 《輪廻》のバルバトスとして授業をひそかに抜け出して、
アルト・テグラスを捜索中。
「なぜ急にいなくなった!すぐとなりにいたハズだが、、影魔法の使用形跡も確認できた。
影魔法ならそう遠くへは移動できない筈だ。
確実にこの平原内にいるんだ。。。」
身体強化魔法を使ってひたすら走り回るが、痕跡が見当たらない。
ベルクは焦っていた。
ジャミトフから『アルト・テグラスの監視』という命令を受けているため、一緒に居られる時はできるだけ側にいなければならなかった。
ベルクの口から微笑が零れる。
「やってくれたな、アルトめ。
空間収納解除!
使い魔 パーフェクトゴーレムへ命令する、身体をAndroidに擬態させてアルト・テグラスを捜索せよ。」
『御意、』
収納から出てきたゴーレムは4メートルはあったであろう身体がみるみる内に小さくなり、人間の一般男性程にまで縮小して自立モードに入って動き出す。
「頼んだぞ。」
────────────
──────
死の平原 最北端
シノビ連合(?)隊員60名。
かなり腕に自信があるやつばかりだな。
あとはこいつらが連合の上位層ではなく下位層ではないことを祈ることしかないな。
「お前らみたいな連合の幹部レベルが俺に何の用だ?」
氷結魔法を繰り出した獣族の女の子が怪訝そうな顔をする。
「何を言う、我々はこれでも連合では下の方に位置するが?、、」
マジか!(大マジ)
このレベルがウヨウヨいるのかよ!
さらに上は、、Sランクか。
これは仲良くした方が良さそうだな。。。
「とにかく、試練とか言ってたな。」
俺は隊員の中でひときわ目立つ赤髪のエルフを睨み付ける。
背中を蹴ってきたやつだ。
痛かったぞあれは。
「お前らに命令したやつの名は、誰だ。」
「........《鬼神》...」
「──────は?、、」
聞き間違いか?
《鬼神》って、、
「《鬼神》オルヴァルドです。」
今度は聞き間違えない。
オルヴァルド。。。
あいつ、生きてたのか。
「よかった、消息不明って聞いたから心配してたんだよ。」
「........」
女の瞳孔が開く。
動揺していることが手に取るように分かる。
「....今の発言で確信しました、しかし念には念を入れて、、、」
ズズズッと音を立てて影魔法の《影収納》から出てきたのは見るからに高性能なオーラを纏う2体の『Android』だった。
「異世界に来てからは初めて見たな。」
赤髪の女エルフが右手で髪をかきあげて説明する。
「Androidに似せた自立型の式神です。片方は魔法攻撃特化、もう片方は式神使いの能力を備わせています──────それでは、始めッ!」
〔──────■■■■■〕
開始と同時に味方の安全第一のためか、連合隊員を囲うように半球状の防御付与の異絶燐丙間を展開する。
空間魔法───となるとこのAndroidはかなりの性能と知性を併せ持っているな。
「フレイムファイア」
「式神 シェイクスピア」
「は、?」
今の詠唱は、古代魔───
数刻の後、横たわるような円柱に等しい紅蓮の炎が俺の横を掠め通り、後ろの森を焼いていく。
初手の異絶燐丙間は俺からの攻撃ではなく自分等の攻撃を気にしてのことか。
「空間魔法 収納空間」
左肩近くに浮かぶ黒い空間から右手でソレを握り、引き出す。
・名前:魔剣 ゼイニスファニス
効果:≪硬度変化≫
使う者の魔力量によって硬度を変化させる。
魔力が多い程変化の幅が変わる。
所有者:《鬼神》オルヴァルド
「───アイツからこいつを預かってたんだったな。」
俺が記憶の谷に浸かっている間にも、魔法が使える方の式神が掌を前に差し出し、攻撃態勢に入る。。
「ストーンバレット」
耳を貫くようなキィィ───ンという音と発光の後、
台風の時の雨の如く水風船を握り潰したように岩の弾が四方八方に飛び散る。
「硬度無視!」
ゼイニスファニスの効果を発動し、向かってくる岩の弾を切り裂いた。
しかしゼイニスファニスを持つ手から違和感に襲われる。
紫色の仮想の質量に身体を貫かれるような違和感ではなく、取り返しのつかないような、、、
不意にゼイニスファニスに眼を向けると刃こぼれをしていることが確認できた。
魔剣ゼイニスファニスの特性上、刃自身も硬度はオリハルコン以上になるよう魔力を込めて、それでも余る魔力で触れた物にも効果を付与している。
そこまでの処置をしていても刃零れをするということは───
「対物理結界 展開!」
ゼイニスファニスを空間収納から出した鞘に収める。
自らの攻撃を止め、飛んでくる岩の弾を身体で受け止める。
正直に言えば魔神王の身体は筋肉密度が100倍なので当たったところでどうということはない!
、、、のだが、対物理結界にヒビが入っているところをみるとやはり───
「.......やっぱりな。まったく、良い腕してるよホント、」
弾には魔力が過剰なまでに込められていた。
先程のフレイムファイア、ストーンバレットを思い出す。
魔力総量では完全にあちらの方が上だな。
「これじゃあゼイニスファニスを出した意味ないじゃん、」
対物理結界と同じくゼイニスファニスは『物理』には強いが、魔力は防ぐことができない。
魔力でコーティングしたところでたかがしれている。
厄介だな。
俺は距離を取るために踵を返し、魔法使い式神とは反対方向へ進む。
が、行き先を阻むように指揮官式神が現れ、
「シェイクスピア、最大出力 氷河魔法」
辺り一帯が氷に包まれる。
死の平原の北端だから肌寒いってのに、余計寒くなったな!
「なりふり構ってられないな、、ったく、」
文献で見た限りだと、《英雄騎士》アルゴによって討ち滅ぼされたと言われる式神シェイクスピア。
式神のなかでも最強格と聞いたのだが、、
予想以上だな。
状況も状況だ。
ピエロ君を出して魔力を補うか。
俺はまたも空間収納からピエロ君を呼び出した。
アルゴの称号は《英雄騎士》です。
オルヴァルドの《鬼神》と同じくらい貴重な称号です




