迫る闇
死の平原
広場中央
「よし、
それではお前らに使い魔と契約を交わしてもらう。
内容は魔力を倍に増やす契約だ。魔術師が使い魔と初めて契約する際によく用いられるものだな。」
「せ、先生ッ!」
「お、どうしたルーク。質問か?」
ルークはおずおずしながら、言葉を続ける。
「……その、さっきから気になっていたんですが、契約をする際に何か《代償》となるものは必要ですか?錬金術みたいに等価交換だと思うのですが、、、」
するとザニーが指をパチンと鳴らして、ルークを人差し指で指す。
「そう、それだ!それを今から言おうと思っていたんだ!お前らもよく聞け。今から話すことがこの契約の肝だ。あーただ、錬金術ほどきっちりした等価交換ではないからそこは安心して欲しい。」
少しざわついてた皆の空気が静かになる。
「召喚した使い魔と契約を交わす際、もっとも大事なことが《生け贄》だ。
だが、
お前らが思っているような生け贄ではない。
髪の毛や爪など身体の遺伝子が含まれるものであればなんでもいい。」
皆、、とくに男子は《生け贄》という言葉に唆られ、直ぐに
『使い魔、髪の毛を生け贄に魔力を倍に増やす契約をして!』
と叫び出す。
女子は比較的男子より上品に契約を交わす。
ベルクはいつも通りハッスル風(?)に。
アベルはカラカラと笑うように。
ルークは慈愛に満ちた表情で子供のおねだりのように。
そんな中、俺は少しはなれて──────
「ピエロ君、転移」
シュンッと音を立て現れる我が使い魔(三体目)。
「はぁい?(伺)」
俺は厨二病が如く、身体を左へ少しくねらせて、右腕で正三角形を用意して顔に手を置き、左手でギ○リック砲を打つかのような構えをし、ピエロ君の顔の前に留める。
「俺と契約をしろ、ピエロ君。俺の小指をやる。その代わり魔力を4倍にしろ。」
「はあい。(是 待)」
するとどこからともなく現れるアル・タロ。
「あーあ。遂にご主人様もそのような時期に入られましたか。。。」
呆れ引くタルタロス。
「だ、大丈夫ですよ、ご主人様。
ネルス様もエイナス様もサリフ様もデリア様も
『男性とは常に変』とコイバナなるもので仰ってましたし、アリーゼ様も
きっと、
多分、
絶対、
もしかしたら、
高確率で、
奇跡的に、
ご主人様を好いてる筈です。じ、自信を持ってください!」
狼狽えるアリス。
おいおい、厨二病を迫害するな。
俺がここでうっかりアトミックしちまったらどうするつもりなんだ。
てゆーか真似してただけだし?
厨二病じゃないし?
「冗談だ。それより、、、」
グッ、、ブチブチィ!!!
右手で左手の小指を千切り取る。
たしか、、、《暴食》のグレイストンもやってたなこんなこと。
バーサック式式神召喚魔法、、だったっけか。
どちらにせよ禁忌魔法だ。
縁も縁もないけどな。
いや、あってほしくないがな。
「さぁ、ピエロ君。生け贄だ。受けとれ。」
「は、は、はぁい、、(引)」
ピエロ君が小指を受け取り、契約を履行させる。
"ブワッ"
瞬間体内を駆け巡る魔力の密度が4倍になり、徐々に密度が下がって体外へ魔力を放出する穴である
『魔力孔』
から魔力が漏れ出す。
「……………ぶっちゃけ痛いですか?小指千切り取るって。」
俺はタルタロスの質問に答える寸前に左手の小指を治癒魔法で治しておく。
「痛いぞ。かなり痛いんだぞ。俺は治せるからいいが、他のやつらは指で契約したら治癒の途中で魔力切れを起こすだろうな。」
いつの間にかピエロ君を抱きしめていたアリスがこちらに振り向き質問する。
「もしかして、最近の魔術師って魔力総量が低いのですか?魔力切れってことは魔力を倍にしても完治するほどの魔力がないってことですよね。。。」
「まぁな、前世で戦った《好戦的なヤツら》に比べれば、確実に年を経るごとに魔術師が弱くなっている。」
すると広場中央からザニーの声が聞こえる。
「よーし!みんな契約し終わったな!少し休憩にしよう。あとは増やした魔力を保つようにな!元の量に戻ったらまた契約してもらうからなー。」
「「「はーい!!」」」
────────────
──────
休憩時間
さっき昼食を食べた木陰でザニーとネルスで現状について話し合う。
「なぁザニー、そういえば《蒼雪》ウェルファってまだ生きてるか?
転生直前の30年前にはまだ生きてた筈だけど、、、
ってお前修行行ってて知らないっけ、」
「あー、そいつ死にましたよ、つい最近の話ですけどね。」
「マジか」
さっき言った『好戦的な奴ら』の内の一人。
前世では昼夜問わず勝負を吹っ掛けてきてよく迷惑したものだ。
それに、、
「じゃあさ、ネルス、《鬼神》オルヴァルドは?あいつエルフだったろ、100年前に会ったきりだけど、、、」
《鬼神》オルヴァルド
1000年前の魔術師。
てか今も普通に生きてる(ハズ)
よく戦いを持ちかけては敗けて、
魔神王の城でもてなしてやったり、
まだ幼かったナイター達の面倒を見てくれたり意外と良いヤツだった。
「彼なら冒険者ギルドでSランクの冒険者をやっていますが最近は見かけませんね。。。
その類いで言うなら、
《終焉》ニリスヘァ、
《罪華》リーグヘッグ、
《剣聖》フィーゴル、
《不死身》ラバン、
《神殺し》カルロス
は全員死亡が確認されています。
」
、、、なんというか分かりやすく戦闘狂が狩られている気がする。
ゼリエスタ教の影響かな?
あまりにも戦闘慣れしていると危険視されるんだな。
気を付けておかなくちゃ。
そして俺はザニーに目を移し、
「、、てゆーか授業どうしたんだよ、なんでちょくちょく休憩挟むんだ?別に皆契約したから古代魔法作り始めても良いんじゃないか?」
「・・・・・・」
ザニーの顔に苦痛の表情が浮かぶ。
やめろよ、なんか俺が悪いみたいじゃん。
いや実際悪いかもしれないけど、
「ここだけの話ですが、、、」
ザニーが顔を寄せて耳打ちする。
「フレリア教のベイルート王国支部が例の教会に襲撃を受け、七冠の一人が死亡しました。」
「あぁ、、そういう、、」
たしか七冠は、、、
えーと、?
エイナスの〈宗教心理学〉で習ったはず、、、
確か、、、、、
《神話》
《永久》
《聖人》
《真価》
《霹靂》
《敏捷》
《同化》
の七人。
ちょくちょく休憩挟むのは本当に生徒の休憩もあるけど、ゼリエスタ教の襲撃を警戒することもふくまれてるのか。
そりゃあんな大々的に学園襲撃されちゃあやらざるを得ないっていう意見もあるだろうけど。
取りあえず次の授業までは寝るか。
「ネルス、ザニー、俺寝るから、周辺の警戒たのんだ。」
ザ「分かりました、」
ネ「承知しました」
俺は使い魔契約など、無理なことをしたせいか直ぐに眠りについてしまった。
一人の七冠の死がこのあと引き起こす出来事など知らず────────────
今の内に書き忘れた設定を、、、
魔人
魔族
魔王
魔界王
魔神王
強さ、権力の序列はこんな感じです。
因みに魔王というのはダンジョンを管理している上位魔族のことです。




