報告
「報告します。上位魔族のウィーデルですが、結果的に逃す形になってしまいました。申し訳ありません。」
「気にしなくていいよ、アリス。それよりタルタロスの方は大丈夫なのか?実の姉だろ?なにか考え込んでなきゃ良いんだけどさ。」
「はい。、、」
アリスが右手で左手首をぎゅうっと掴む。
それにどこか浮かない顔をしている。
なんか悩んでるんだな。きっと。
「おーい、タルタロス!」
「はい?なんでしょう?」
ドアの付け根あたりから顔だけをひょっこり出すタルタロス。
「ゴタゴタの後で悪いんだけどさ、、、これ、ご主人様命令ね。いまからアリスが悩み打ち明けるまで死ぬほど甘やかすこと。はい、やって。」
パワハラ100パーセント。
でも使い魔に悩みを持たせたまま生活してほしくない。
俺なりのお節介だ。
「了解です!最近アリス成分が不足してたんですよ!ベッド行ってきます!!」
「行ってこい!」
アリスを無視して会話が進み、無事、アリスはタルタロスと一緒にベッドに向かった。
ーーー
ーー
《例の教会》ベイルート王国内 隠れ家
「報告します!!───卿!」
息を切らし、整えた前髪が崩れる程急ぐ幹部の一人が通信の為、隠し部屋に入る。
霧魔法が組み込まれた魔道具に黒マントを顔が認識できないほど深く被った男性がぼんやり映る。
「どうしたんだね?そんなに急いで、品に欠けるではないか。」
「もう品なんて言ってられる場合じゃありません!僕の魔法人形の通信が途絶えました!直前まで映っていた映像には─────」
「ザザッ────ぅした?────く───ぇなぃ────なにが───った───ザザッ──────ザフッ」
霧魔法型通信具が煙を上げて熱暴走し、映像が途絶える。
「あ、、あっ、、、た、た、」
いつの間にか開いていた扉には一人の青年が強引に入室する。
警備魔道具系統は既に制圧され、幹部の退路が完全に断たれる。
「幻影聖魔法 狂楽黒道化」
「た、助け─────」
その日、隠し部屋に続く階段には男の悲痛な叫び声が壁の苔を一日中震わせたという。




