潜入と侵入
バラモンズ学園 闘技場 地下室
「、、、?、、、アルバート君?、、、、懐かしいなぁ。昔よく『トロール鬼ごっこ』とかやったっけ。。。一目、、会いたいなぁ。」
闘技場
「来ましたよぉ!!!決勝戦だぁぁぁ!!!」
実況のヒト、すごい興奮してんなぁ。
ちょっとうるさいぞ?
「ご主人様?どうしたんですか、難しい顔して。」
隣にいるのはタルタロス。
そしてそのとなりにアリス。
本当に仲がいいな。
「いや、さっきから何度も広範囲索敵魔法をやってるんだがあのファラクト学園の生徒。上位魔族だ。」
「え!?全然気づかなかった。。。」
アリスはビックリしているが、そりゃあ常に横に上位魔族がいれば感覚も鈍くなるか。
「次はアリーゼとの決勝戦だ。あいつが変な動きをしたら俺が隠蔽結界を張る。その内に仕留めてくれ。」
「いつでも動ける準備はしておきます。」
タルタロスは思いの外真剣な眼差しをしている。
同じ上位魔族として許せないのかな。
「あぁ。助かる。」
あとはタイミングだ。
どんな手を使ってくるかが問題だ。
観客席全員を眠らせるような魔道具を使われたら俺らでも動きが鈍くなる。
さすがにそこまで大それたことはしないだろうが、、、
そもそもあの魔族の目的はなんだ?
もしかするとファラクト学園までグルかもしれない。
目的がわからない以上は慎重にことを進めないとな。
「決勝戦は、、、
初参加の一年生!不敗神話の、、、
アリーゼ レングラス!!!!!!
そして対する相手は、、、
こちらもルーキー!!!ファラクト学園で『最強』を名乗る天才一年生!!
ウィーデル グランマリア!!!!!!
それでは、、、、
試合開始ッ!!!!!!
」
スッ
音もなく、消えたウィーデルを名乗る魔族はいとも容易くアリーゼの背後を取り、
持ち込み禁止の魔剣でアリーゼの心臓を貫いた。
アリーゼは何が起こったか分からず、口から血を吐きその場に倒れ込む。
通常、普通の剣ではこの大会の鎧は貫けない。
いや、そういう設計だ。
だからこそこの大会のルールは真剣で
相手の胸にある花びらを全て散らす
相手が敗けを認める
どちらかが場外に出る。
のいずれかで勝敗が決まる。
だからこそ鎧を貫けるのは魔剣と判断されるのだ。
観客席が一気にどよめく。
「おぉっと!?アリーゼさんが心臓を、、、って!!
それはもしや、、、持ち込み禁止の『魔剣』だっ!!!!!
ウィーデルさんは失格です!!!今すぐ武器をおいてください!!!!」
実況のヒトがやや焦りぎみに言う。
もちろんそんな言葉は聞く耳を持たないウィーデル。
もう一度、魔剣を構え、今度はアリーゼの足に狙いを定める。
「いかん、エイナスッ!ヤツを止めろ!!」
ネルスがいち早く事の重大さに気づきエイナスに命令する。
エイナスが飛び出すより速く、俺はアリーゼのところに向かった。
と同時に、
「空間魔法 異絶燐丙間」
今回は魔力の少ないヒトに対して睡眠の効果が適用される。範囲はこの闘技場内。
結界の四隅は闘技場に合わせておく。
「チッなんだこれは!頭がボォーと、、、、」
苛立ちを隠せないウィーデルは次の瞬間には既に俺の渾身の回し蹴りで、観客席の壁に埋め込まれていた。
「アリーゼ!大丈夫か!今治すから!」
アリーゼは心臓の痛みを我慢しながら重い口を開く。
「アルト君、、、ごめんね。。。私、、、」
アリーゼの頬に大粒の涙が流れる。
「優勝、、、できなかった、、、せっか、、く、たのしみにして、、、くれてた、、のに、、」
苦痛と無念の波が押し寄せて、アリーゼの顔はくしゃくしゃだった。
俺は、、、何をしているんだ。。。
俺の我が儘で、、彼女を傷つけてしまった。
挙げ句の果てにこんな顔をさせてしまって、、、
俺は、、、、
その時、元妻のアリーゼが殺された時、、いや、その時以上の尋常じゃない魔力が俺の体から溢れ出た。
「浄化治癒聖魔法 回帰転」
即興の治癒魔法で、まずはアリーゼの心臓を完璧に治す。
「ほとぼりが覚めるまで寝ててくれ。ごめんな。」
アリーゼに睡眠魔法をかける。
これでアリーゼの方は一安心。
「アリス、タルタロス。あとは、、任せたよ。」
ア、タ「「はい。」」
俺はアリーゼを抱き抱えながら、学生寮の自分の部屋へと向かった。




