普通の授業
一時間目
魔法基礎
場所は魔法実習教室。
日本の理科室みたいな所。
すごく薬品とかの匂いがする。
ガララとドアをあけてエイナスが入ってくる。
生徒に座るよう促して、教室の隅々まで伝わる声でしゃべる。
「いいか!今からお前らには魔法で《氷の花》を作ってもらう。ただし実習のあとだからと気を抜くなよ!チャンスは三回までだ!!」
すると奥から手が挙がる。
「先生!花の種類は何でも良いですか?」
エルレンか。
「花は各々自分がもっとも美しいと判断したもので良い。他に質問がないようなら───」
「先生。」
「アルト テグラスか。なんだ言ってみろ。」
「どのくらいの大きさが目安ですか?」
拍子抜けした質問に少々戸惑うエイナス。
「お、大きさ?、、うーん、、まぁ、どんなに大きくても長さを30センチ、、いや、やっぱり30センチの花を皆つくってくれ。」
皆が急に悩み出す。
まさか大きさのことを考えてなかったのか?
エイナスはそれを無視して号令をかける。
「それでは、、、、、始め!」
皆が一斉に図面に絵を描き出す。
俺はそんな中一人でぽかんと口をあけていた。
と、隣に座っているベルクに話を聞こう。
「な、なぁ、ベルク?皆何してるんだ??」
「は?何って図面かいてんだよ。芸術的な魔法を使うにはまず設計図からだろ?」
え?そうなのか?、、、
とりあえずモブになりきるためにも適当に線を引いて、、、
「氷河魔法 乱青菊」
パキパキと音を立てながら、青く輝く菊の花たちが開花する。
よし、こんなものか、、、ん?
「ア、アルト、、お前「氷結魔法」じゃなくて「氷河魔法」を、、使うんだな。。。はは、、、、」
ベルクがめちゃくちゃ驚いている。
何か変だったか?
「す、すごいよ!アルト君!氷河魔法なんて!千年に一度の逸材じゃないか!!」
称賛してきたのは同じクラスの、、、
「ロベルト君、、、だったっけ?」
「うん、名前覚えててくれたんだ!」
それにしても千年に一度の逸材かぁ、、、また目立ってしまうかもしれないなぁ。。。
ここは注目の的を変えよう。
「あ、あーこれは、、その、、、じ!実習の時に!アベル君達が教えてくれて、、そのお陰でできるようになったんだ、、はは、、、」
「「ええええええぇぇぇ!!!」」
皆から歓声が上がる。
そして一気に皆の視線がアベルに向く。
「い、いやぁ、、はは、、でもあれはアルト君の才能によるものだし、、、」
アベル!?裏切ったなぁ、、、
「おい、アルト。その花を見せろ。」
声をかけてきたのはエイナス。
「ど、どうぞ。」
エイナスはその花をジロジロ見続ける。
そして一つの刻印に気づく。
「ア、リー、、ゼ、、、」
エイナスは恐らく気づいた筈だ。
この《乱青菊》はアルバートだった頃に
今は亡き妻アリーゼに送った物だ。
そして名前も刻印しておいた。
それを再現したんだ。
気づかない方が馬鹿だろう。
「アル、、バ、、」
「どうかされましたか?エイナス先生?」
俺は挑発的に問いかける。
エイナスは唇をギュッと噛みしめて感情を圧し殺す。
「良くできた花だ。でも細部が乱雑になっている。
もう一度、氷結魔法で一輪のみ作ってみろ。」
「そっち」を選んだか。
エイナス、お前は良くできた部下だよまったく。
「分かりました!」




