モブらしさとは
十五歳になったころ、王都にあるバラモンズ学園に通えると母から聞いたときは胸が踊った。
俺はついに手に入れたんだ!モブ生活を!!
道を通れば畏怖と尊敬の眼差しを送られ、
言葉を発すればなんとなく皆が納得し、
なにもせずに生活していれば、勇者が現れる。
(そして封印される)
あんなクソみたいな生活じゃない!!
ごく一般的な生活を!!
この日のために自分で考案し、前前世に俺が通っていた高校のアニメオタクの挙動を模倣した究極奥義
「モブ魔法」(魔力不使用w)
を学園で披露できるんだ!
俺は遂に─────
「なにボォーっとつったんてんのよ。アルト、学校遅刻するわよ?」
玄関で、感動のあまり涙腺を崩壊直前までキープしている所に水を差してきたのは、俺の姉
ユリア・テグラス
バラモンズ学園の生徒会長であり、王国騎士団の次期騎士団長と期待される剣技の天才。。。いや、とうに神の域にいるのだが。
俺は玄関で靴を履いた。
何気ないこの靴を履く瞬間もモブが試される。
まずは靴を履く!
靴はローファーだから、
なるべくカツッとかカコンッみたいな音を出さないことが大事。
そして踵まで履き終える間際に踵部分に指をなぞらえて、カツンと一回鳴らす。
完璧だ。
ここまで細かくモブに拘る男がかつて居ただろうか。
「アルト?道とか分かってる?私さ、生徒会でやらなきゃいけないことあるから早く行きたいのだけれど、いい?」
この問いかけには少し間を置く。
親指と人差し指を顎に当てて、二秒間待つ。
「いいよ、生徒会頑張ってね。」
「行ってきます!」
ふぅ、、弟の登校初日に道案内より仕事を優先するおかしな姉は置いておいて、
冗談抜きで道が分からん。
広範囲探索魔法で学校の位置を特定しようにも、俺が魔神王として死んだ後に俺が使えるほとんどの魔法は禁忌魔法として登録されて、無断使用は重罪だ。
はぁ、普通に歩くか。




