飼い主は舞い戻る
タルタロスは翼で、俺は素の筋肉だけでアベル達のところへ向かう。
「ケルベロス、近いです!アリス達も一緒にいます!
、、、、、、あっ!見えた!」
そこには毒の唾液を垂らし、疲れきったアベルを身を挺して守るアリスに近づくケルベロスの姿があった。
「アリスっ!!」
「た、タルタロス君!?」
タルタロスはさらに加速して、ケルベロスの顔の横まで到達する。
「俺のアリスに──────」
タルタロスの両手に膨大な魔力が集まる。
「近づくなぁぁぁぁ!!」
放たれた技は魔族専用の大技、
《臨閃砲》
というものだった。
黒と青が混じりあい、壮観な一つの光がケルベロスの頬に直撃する。
やがて、煙は消えてケルベロスの頬に現れたのは魔法陣だった。
「組み込み魔法の無効化魔法か、、、」
己の非力さを口に残し、タルタロスはアリスのやや前に降り立つ。
「下がっててアリス。危険だ。」
「うん。。」
ケルベロスの魔法陣はおそらく召喚したであろう者の魔力ではなく、ケルベロス本人の魔力を使う。
その魔力を吸われて弱まる一瞬を俺は逃さない。
「牽制ありがとう、タルタロス。」
俺は空中に飛んで、ケルベロスの頬に筋力全開放で回し蹴りをする。
音と同レベルの速さでケルベロスが俺とは反対方向に木々を薙ぎ倒しながら吹き飛んでいく。
「魔法がダメなら素の筋肉を使う。物理防御の組み込み魔法はないようだな。」
吹っ飛ばされたケルベロスは恨みがましい目でこちらを見る。
「グゥゥ、、、」
「おいおい、怒るなよ。久しぶりに遊ぼうじゃないか。ケルベロス」
俺は同時に魔法を展開する。
学園長室でやった死門の応用
「鬼門 最終段 璉峠戒刕門 開門」
高さ5メートルのでっかい扉がケルベロスの後ろに開かれる。
「魔界へ繋がる唯一の扉だ。」
俺は再度ケルベロスの腹あたりに蹴りをいれて、扉の引力に乗せて送り出す。
「ちょっと頭冷やしてこい。このバカ犬」
「キャンッッ!!!」
元気のいい返事だったな。
ケルベロスがやられたんだ。召喚士も身の危険を感じて逃げてっただろう。
帰るか。




