非常事態
午前四時
早朝近くにも関わらず、試練の森では絶え間なく金属音が鳴り響いていた。
「皆さん!右からもう一匹ヴォイダーキャットが来ます!バルトさんは前衛で足止め、アベルさんはバルトさんが足止めしてる隙に聖魔法で浄化して下さい。エルレンさんは援護を頼みます!」
アリスによる的確な指示で、二十匹近くいたヴォイダーキャットも残り二匹まで数を減らした。
「これで終わりだっ!」
アベルの持つ剣で、ザシュと音を立て絶命したヴォイダーキャットでどうやら最後だったらしい。
そんな中、
俺はというと、、、
「へぇ~!じゃあ転生してこの姿になったんですか?すごいですね!!」
興味津々で俺の話を聞くタルタロス。
そんな面白い話してないんだけどなぁ。
「あぁ。まあな………あ!そうだ。お前らも魔界に帰るの面倒だろ?俺の寮来いよ。執事とメイドってことでどうだ?」
「え!?アリスも一緒なんですか!?」
その瞬間タルタロスの顔がやや紅くなる。
いや、もともと魔族は肌が紅いけど。
あとすごく顔を逸らしてしまった。
この反応から察するに、、、
「好きなのか?」
もっと紅くなる。
「い、いや、ま、まぁ?、、、そ、そのぉ、、、
はい。。。好き、ですね。一目惚れっていうヤツです。。。」
遂にモジモジしだす。
なんかこう、、、使い魔と使い魔のこういう関係って、、しみじみするな。
「それはさておき、、そろそろかな?アベル君達も帰ってくると思うんだけど。」
「あー、そろそろですね。迎えに─────」
一言で言えばゾクゾクといった感覚だろうか。
全身の毛が逆立つ感覚。
かなり嫌な悪寒。
この魔力は、、、
「魔界の番犬 ケルベロス、、、かな」
「そう、、ですね。なんで地上に、、、」
タルタロスの表情は険しい。
魔人や魔族にとってはケルベロスは死の象徴。
昔から恐れられてきた。
でも俺が魔神王だった頃はペットみたいな感覚でよく遊んだっけ。
でもこうなってくるといよいよ怪しい。
最初のヴォイダーキャットはネルスのミスだと思っていた。
でも明らかに学生では勝てないと分かるヴォイダーキャットが二十匹もいるのは異常事態だ。
それに加えケルベロスか。
「俺も行く。タルタロスはアリスとアベルを守ってくれ。」
「わ、分かりました!」




