野宿
私生活の忙しさにも負けずに頑張るゾー
そこら辺から木を拾って、火魔法で火をつけて焚き火は完成した。
簡易テントを建てたところで、皆が焚き火を囲うように集まった。
最初に口を開いたのはアベル、
「あの、、さ、、、アルト君の、、、話なんだけ、、、ど、、、、」
話しづらそうに言葉を放つアベル。
そういえば話す約束をしたんだったな。
「俺は─────」
こいつらはあの勇者パーティーの子供達だ。
このまま話して他言しない可能性はゼロじゃない。
でもこのまま話さなければこいつらはもっと俺を疑い、警戒するだろう。
そうなれば俺の夢である「モブ生活」なんて夢のまた夢になってしまう。
覚悟を決めろアルバート!
腹をくくれ!!!
「俺、、は、、、」
焚き火を囲む皆が固唾をのんで見守る。
「俺は 東の魔神王 アルバートの生まれ変わりだ。魔神王の生活に嫌気がさして、勇者達に封印してもらった。その封印空間で自害して、今に至る。」
俺が話終えてから何分が過ぎたのだろう。
いや、体感の話だ。
きっと十秒もたってないが、かなり長く感じる沈黙が続いた。
「アルバート、ですか。」
沈黙を破ったのはアベルだった。
「あぁ。今まで黙ってて悪かった。だが、俺だってこの名前を振りかざしたくない。穏やかな生活を送りたいんだ。だから、、その、、」
俺の話を遮って、聖女の娘が話し始める。
「他言しないように。ですか?」
炎に照らされて映る彼女の目は真剣そのものだった。
「あぁ。頼む、この通りだ。」
俺は前前世の知識史上最高のおねだりポーズ、
土下座
を披露した。
アベル達が一斉にとめにかかる。
「お、お止め下さい!アルバート様!」
「へ?」
聞き間違いじゃないよな?
今様付きで呼ばなかったか?こいつ、、、
「な、なぁ、何で俺のこと様付きで呼ぶんだ?魔神王ってのは邪悪で暴虐な、、、」
俺がそう言うなり、アベル達は一斉に吹き出した。
「アハ、アハハハハ、フフ、、、ちょっ、ちょっと、思考が古すぎやしませんか?アルバート様?」
聖騎士の息子が笑いをこらえながら俺に言う。
「どういうことだ?魔神王は悪の象徴ではないのか?」
「その考えはかなり古典的ですよ。フフッ、むしろ 歴史 ですね。今は魔神王は神として崇められています。特に東の魔神王、貴方がね。」
「俺が?か?」
「はい。」
その後聞いた話によると、勇者パーティーがアルバートこと東の魔神王を倒しに行ったさいに、俺ら魔神王が友好的だと分かったらしく、
魔神や魔族を抑制して、王国に損害がないのは魔神王のおかげだ、という考えが広まったらしい。
なんてめちゃくちゃな、
まあいいか。
「あ、そういえば自己紹介まだでしたね。
私は《聖女の娘》のエルレン・ハルバトール、後方支援担当の魔術師です。」
「俺は《聖騎士の息子》バルト・ベイカーズだ。よろしく頼む。」
ふーん、エルレンにバルトが。
覚えておこう。
「それで、、」
アベルがおずおずと質問しかける。
「あぁ、俺とは普段通りで接してくれ。妙に敬称とか敬語はいいから。」
「そ、それもそうなのですが、、、そちらの方はどなたなんですか?」
アベルの指、エルレンとバルトの顔の先には使い魔として召喚した天使
アリスがいた。
「えっ?私??」




