修学旅行後半
修学旅行も後半、今日は都内を自由行動となっている。
わたしは神樹さんと一緒に大通りを歩いていた。
通りの左右には色々な店が建ち並んでおり、飲食店やお土産屋、呉服屋等がある、何れも時代を感じさせる趣溢れる木製家屋で店先には暖簾が架かっている。
わたしの時代から300年経った今も変わらず残っているのは凄いと思う、流石に補修はされているだろうけど。
「守代さん、ちょっと彼処で休憩していかない?」
神樹さんが指差す方には「時雨庵」と書かれた看板がある茶屋らしき店があった、軒先にある赤い布が敷いてある長椅子では他校の生徒が団子や柏餅を食べている。
「そうだね、んじゃ入ろうか」
暖簾を潜り店内に入ると和服姿の店員さんが席を案内してくれ、わたし達は近くの座席に着いた。
落ち着いた雰囲気で良い感じの店だ、壁には水墨画等が飾られている。
机に置かれているメニューを開くと、甘味が殆どを占めているようで先程の団子や柏餅、餡蜜、羊羮、大福、どら焼、等々...和菓子で埋め尽くされていた。
次のページを捲ると、洋風もあるようだ。
只、材料は和がメインになっており、きな粉アイスに小倉ホットケーキや餡トーストの写真が載っている。
メニューを次々に開いていくと他の物より一回り大きく、強調されたのがあり、そこには「期間限定特大宇治金時スペシャルパフェ」と書かれていた。
ふむ...なんか美味しそう...よしこれにしよう。
「すいません、注文をお願いします」
わたしが声を掛けると直ぐに店員さんがやって着て注文を取る。
「わたしはこの期間限定特大宇治金時スペシャルパフェを」
「あたしは小倉クリームパンケーキと紅茶を」
注文を受けとると店員さんはお辞儀をして厨房へと入って行った。
それから神樹さんと他愛のない談笑をしていると頼んだ料理が運ばれてきた、テーブルにそれぞれ置かれる。
「うわ...これは...」
「す、凄いわね」
でかかった、そのパフェはひたすらでかかった。
前に座っている神樹さんが見えない、それくらいでかい。
てか値段は普通だったしここまででかいとは思わなかったのだが...
仕方ない、食べるしかあるまい。
「い、頂きます...」
一番上に乗りそびえ立つ抹茶のソースが掛けられたクリームをスプーンですくい口に運ぶ、程よい苦味の抹茶ソースと甘いクリームが口の中で交わり合う。
うん美味しい、クリームも重くなくドンドン口に入る。
クリームの横にある抹茶アイス二つもさっぱりしていて直ぐに消えていった。
クリームとアイスをクリアし次のステージに進む、そこにはスポンジケーキらしきものが敷き詰められている、上に有ったクリームとアイスで表面はしっとりしていた。
スプーンで抉り取り頬張る、スポンジケーキは二層になっており間にはカスタードクリームが塗られていた。
甘さ控えめのスポンジケーキと甘めのカスタードクリームがバランスよく調和している。
スポンジケーキはふわふわであっという間に口の中で溶けていった。
ここまででまだ半分、お腹が結構膨らんできた、さて次は...
第三ステージ、ババロア。
プルプルとした薄緑色の抹茶ババロアが姿を表す、スプーンに乗ったそれは弾力があるが口に入ると滑らかでつるんと喉を通過していく。
...が、これが難敵だった。
このババロア、巨大な容器の半分以上を占めているのだ。
食べても食べても次が見えてこない、ひたすら食べ続けてようやく最後のステージに...
ファイナルステージ、地獄の底無しゼリー沼。
緑と黒の小さな四角いゼリーが無数に敷き詰められ、それが大量の白い生クリームで浸かっている、緑は抹茶、黒は黒蜜。
抹茶ゼリーは苦味が強いが黒蜜ゼリーと生クリームで程よくなる、美味しい、が量がつらい。
最早わたしのお腹は限界ギリギリ、にも関わらず底が見えてこない...
既に神樹さんは食事を終えてわたしを見守っている、ここで負けるわけには...
―――それから20分後。
遂に完食を果たしたわたしはテーブルに突っ伏していた。
「う、動けない...」
心配する神樹さんに介抱されながら、わたしは30分程そのままで居た。
暫く甘い物は食べたくない...




