搬入
「はい、それは後からで、そっちは先に運んで下さい。え~それから...」
雲一つ無い青空の下、研究所の敷地の一画、広いグラウンドに積まれた沢山の大きなコンテナ、それらを所長の指示の元に防衛部のメガドールとエクスブレインでせっせと搬入用大型エレベーターに運んで行く。
なんでも研究用の物質が届いたらしく、それを地下施設に移動させる為に作業をしている。
「にしても...随分と多くない...?」
輸送トラックに積まれて来たこのコンテナ、トラック30台分、数にして100個近くありトラックから下ろすだけでもそれなりに時間が掛かったのだが、そこから搬入となると更に時間を要している。
「いや~、あれもこれもと注文したらこんなになってしまいましてね。あ、それはこっちに」
紙を見ながらそう答える所長、何を注文したらこんなになるのやら...
コンテナを両手に幾つか抱えてエレベーター前に運んで下ろす、下ろしたコンテナはベルトコンベアで職員の人がエレベーター内に運んで行く。
「しかしエクスブレインのおかげで大分早く終わりそうだな、でかい分纏めて持てるからな」
遠堂隊長のメガドールが小さいコンテナを持ってすれ違いに通り過ぎる。
「あはは~、どんどん運んじゃいますよ~」
戻ってまたコンテナを抱えてエレベーターへ歩きだす、遠堂隊長とは新しい身体を手に入れた後に初めて再会した。
その時はわたしの事は所長から既に説明されていて、特に何も無かったのだがわたしの経緯などでその前に一悶着有ったらしい。
まあ、脳だけになった子供がロボットに乗せられて戦っていた、なんて説明されたら何かと起こるだろうな。
今は戦う仲間として認めてくれていて訓練にも付き合ってくれる、ありがたいことだ。
「はい、コンテナの搬入は全部終りましたね」
何度も往復している内に全てのコンテナを載せ終わりエレベーターが下に降りていく。
「は~終わった~」
ロボットなので特に意味は無いのだが右肩を回す。
「お疲れ様でした、では一旦休憩を挟んで搬入したコンテナの整理を行います」
手を叩きながら所長が皆に告げる、むう、まだ作業は残っているらしい、わたし達はメガドールとエクスブレインを格納庫に移動させて皆食堂へと歩いて行った。
小一時間程休憩を挟み、わたし達は地下施設に集合していた、防衛部以外にも沢山来ている。
「では再開します、手前に置いてあるコンテナの中身を取り出して空になったものはエレベーターの脇に積んで下さい、中身は各所へ移動をお願いします。
配った紙に品物と移動先が書かれていますのでその通りに従って下さい、では開始しましょう」
所長の合図で皆一斉に動き出す、さてわたしのは...これか。
エレベーター付近に置いてある大型のコンテナに付いている開閉ボタンを押すとシャッターが上に開いていく、ちなみにコンテナは大体高さ3M幅3M奥行5Mだ。
「え~っと、この機械類かな」
中に入って手前の物から運び出す、かなり大きくて普通は一人では不可能だがわたしの身体は通常の10倍の力を出せる、機械を移動用の代車に乗せて運び出す。
「よっと」
中身を全て取り出して次のコンテナに取り掛かる、出した物は他の人達が各所へ運んで行った。
二つ目のコンテナを開くと、何やら大きな金属製の黒い正方形のケースが一つだけ入っていた。
取り出すために近寄る、と。
「...?」
一瞬軽い目眩がする、がそれは直ぐに治まる。
「う~ん、疲れてんのかな?」
頭を振り、気を取り直してケースを代車に乗せると外に運び出し、その後も次々と他のコンテナを開けては中身を取り出して行った。
「はい、これで全部終了です、お疲れ様でした」
最後の積み荷を移動し終えて、所長が皆に終了を伝えると周りから安堵と疲れの声が漏れてくる。
「あ~やっと全部終わった~」
背伸びをしてわたしは近くの椅子に座る、アンドロイドなので疲れはしないが精神的に疲れたのである。
皆がぞろぞろと地下施設から出ていくのを確認してわたしは立ち上がり一緒に連なって自分の部屋に戻って行くのであった。
さて今日のご飯は何かな~




