疑問
今まで何度かバグズと交戦していて、ふと思ったことがあった。
―――バグズは一体何処から来るのか。
それを確認する為にわたしは所長に質問してみることにした。
「成る程、バグズは何処から来るか、ですか」
研究所の中を探していると食堂で羊羮を食べているのを見つけたので、わたしはプリンを頼んで席の正面に座り質問をぶつけてみた。
「バグズって何時も何処からともなく飛んで来るじゃない?機械だしその辺から沸いてきてる訳じゃないだろうし」
プリンを一口運びながらわたしは聞く、プリンは滑らかで甘く、カラメルソースの仄かな苦みが甘さを引き立てる。
「そうですね、勝手にそこらから沸いてる訳でもなければ地球で生産されてもいません」
所長はお茶を啜りながらそう答える。
「じゃあ何処から...?」
「こちらを御覧下さい」
所長が白衣のポケットから端末を取り出して操作すると、わたしの前にスクリーンが表示される。
そこに映し出されたものは...
「...地球?」
そこには青い地球が映っていた。
「この映像は観測衛星から映したものです、
こちらの部分に注目して下さい」
白い矢印のカーソルが何も無い空間を指す、星が映っているだけだが...
と、指しているカーソルの付近が唐突に揺らぎだし、ぽっかりと穴が開いたように大きな黒い空間が現れ...
「これは、バグズ!?」
その空間から無数のバグズが飛び出し、全て地球に向かって行く、暫くすると空間は閉じていきそれ以降は何も出て来なかった。
「とまあ、この様に地球の外で空間を開き飛んで来ているという訳です」
成る程、こうやって来てたのね...と、新たな疑問が浮かび再度質問してみる。
「これって何で空間が開いたり閉じたりしてるの?」
所長は端末を操作してスクリーンを閉じ。
「残念ながら何故この様な現象が起きているかはまだ判っていません、が、我々は一つ仮定を立てています」
「仮定?」
「何者かがバグズを地球に送り込んでいるということです。
今まで確認されたバグズは全て機械です、ということは何処かで生産されていると考えて間違い無いでしょう、何故地球を襲っているのかは分かりませんけどね」
所長は急須から湯呑みにお茶を注ぐ。
「そっか~、まだ解らないことだらけなのね」
「我々に出来る事は飛来するバグズを全て殲滅する事だけですね、現状は」
ふ~む、片っ端から倒してくだけか...何とかならないのかな、完全に後手だよね。
「ただ最近はかなり数が減ってきているようでしてね、向こうの生産力をこちらの殲滅力が上回りだしているようです。エクスブレインのおかげですね」
「えっ、そうなの?じゃあこのまま頑張れば何れは?」
「向こうが諦めてくれれば、ですけどね。
それでも出撃要請は減るでしょうが」
そっか~、じゃあこの調子でバンバン倒しちゃおう!!
わたしは残りのプリンをお腹に納めてやる気を出したのだった。
(本当にこのまま済んでくれればいいんですけど、ね)
―――この時のわたしは所長が何を考えているのか等知るよしも無かった。




