転入
「学校の転入?」
研究所の食堂にて朝食を取っていると正面で同じく食べている所長から話を振られた。
わたしはトーストと目玉焼きにサラダ、所長は米飯に味噌汁、胡瓜の浅漬け、鰯の丸焼きに玉子焼きだ。
「ええ、新しい身体で通常の生活も送られるようになりましたし、でしたら学校に通うのはどうかなと思いまして」
味噌汁を啜りながら所長は話す。
食堂にはわたし達以外にも職員が居るのだが、研究所全員わたしの事は全部知っているらしく、特に隠す必要もないので身体の事もオープンに話している。
「そっか学校か~、中学の途中から入院生活始まってからは行ってなかったなぁ~」
症状が悪化しだしたのがその頃で、それ以降はベッドからも殆ど動けず眠りにつくまでは一度も登校していない。
「どうでしょう、宜しければこちらで手続きして数日には通うことが出来ますが」
ふむ、別に学校に行きたくない理由も無いし、友達と楽しくお喋りとかもしたい。
研究所に近い年頃の子も居ないのでちょっと寂しいのもある。
「じゃあお願いしようかな...」
と、ここでふと一つ思ったことがある。
「ねえ、学校に居る時に出撃要請が来たらどうするの?まだ慣れてないから戦いながらこの身体動かすのは無理なんだけど」
そう、新しい身体を手に入れてからまだ数日しか経っておらず、戦闘中はこっちの身体がつられて動いてしまい、意味もなく走ったり殴ったりして大変なのだ。
「ああ、それでしたら大丈夫、戦闘の際はリンクを切ってしまって構いませんよ。
その間は動けませんから保健室にでも行って身体を置いて下さい、うちの職員を何名か教師や保険医として潜入させておきますので」
ならいいか、ていうかそんなこと出来るんだ...
「他に気になることが無ければ手続きしておきます、宜しいですか?」
「うん、お願いします」
そう返すとわたしは残りのトーストを口にした。
それから数日後、研究所近くにある街の一角、閑静な住宅街に囲まれた市立「神明中学校」、
わたしはこの学校へと転入した。
学校に到着し中を軽く案内される、
それから学年棟へと移動し教室の前に着いた。
一年A組、そこがわたしのクラスだ。
「守代あすかです、宜しくお願いします」
中に入り教卓前で自己紹介を終えるとまばらに拍手が起き、その後に担任の先生が席を示してくる、わたしがその席に座ると前に居る眼鏡を掛けたロングヘアーの子がこちらを向いて話しかけてきた。
「守代さん、あたしは神樹恵実宜しくね」
「こちらこそ宜しく、神樹さん!」
わたしの新しい学校生活はこうして幕を開けたのであった。




